サントリーホールディングスの新浪剛史社長が、「45歳定年制度」の導入に言及し話題となっている。
参考リンク:「『首切りではない』 45歳定年制でサントリーHDの新浪社長釈明」(時事通信 2021年9月10日付)
パッと見た感じでは、「45歳以降はどうやって生きろというのだ! けしからん!」といった反応が多いようだ。
こういう反応しかできない=給料分の仕事していないと自分でもよくわかっている情けない中高年ビジネスパーソンが多いという時点で、この国の労働生産性が低い理由もよくわかるだろう。
とはいえ、「45歳定年制度」は避けられない必然なので、論点をまとめておこう。
企業は45歳以降の人材流動化に舵を切った
多くの人は新浪氏の発言を、政策提言の一つとして受け取っているようだが、筆者は提言というよりもビジネスパーソン個人へのアドバイスのようなものだと考えている。
というのも、現実社会で制度としての45歳定年のような議論はまったく行われていない一方、すでに企業は45歳以降の人材の流動化に舵を切っているためだ。
黒字にもかかわらず、大規模な早期退職募集をかける企業が典型だろう。高額の割増退職金額からは「なんとしてでも中高年にやめてもらい、組織を新陳代謝させたい」という本気度が伝わってくる。
参考リンク:「パナソニック『退職金4000万円上乗せ』で50歳標的の壮絶リストラ」(ダイヤモンド オンライン 2021年5月17日付)
また、ここ2年ほどで耳にすることの増えたジョブ化も趣旨は同じだ。従来の年功賃金を排して働きに応じた賃金にすることで、企業には負担感がなくなるためだ。「若手と同じ賃金でよいならどうぞ、好きなだけいてくださいね」といえば、わかりやすいだろう。
従来型の年功賃金制度を卒業し、若手と同じスタートラインに立つという点で、これも立派な「定年制度」と言っていいだろう。
他にも、45歳以上の中堅社員を異動させて第一線に放り込んだり、未経験の異業種に配置転換したりと、あの手この手で中高年社員を「リフレッシュ」させる施策は、多くの企業で始まっている。
45歳定年は好むと好まざるにかかわらず、すでに誰もが向き合わねばならないテーマなのだ。
10年ほど前に東京大学の柳川範之教授が「人生100年時代、これからは40歳で一度定年退職し、二度目の就活を送るくらいの長期的なスタンスで臨もう」という、40歳定年を提唱して話題となったが、それが現実のものとなったわけだ。