大会経費は「大きくも小さくも見せられる」
それはなぜか――。朝日新聞(9月12日付)「五輪コスト結局は? 公表分は1.6兆円 『関連』含め3兆円超か」が、巨額の赤字の全容がまだ見えない理由をこう説明する。
「そもそも、どこまでが大会費用に当たるのか。大会経費は『大きくも小さくも見せられる』(組織委員会幹部)のが実態で、ルールはない。たとえば今大会で都は、大会経費の枠外の『大会関連費』として、7349億円を投じた。暑さ対策で道路の遮熱舗装などにかけたもので、『大会後も生活のためになる』との理由で枠外になった、と関係者は明かす。背景には、安く見せるよう、IOC側が再三求めてきた経緯がある。
ただ、いくら安く見せようとも、1兆6440億円の枠の外に巨額の経費が存在する事実は動かない。国が負担した『枠外』の経費もある。『枠内』として公表されているのは2210億円だが、会計検査院は2年前の時点で、『(国は)すでに五輪関係で1兆600億円を支出した』と指摘している。これらを勘案すれば優に3兆円を超える計算になるが、『もっと大きい』との声もある。
「最終的な検証は、組織委員会の決算が出ないと進められず、結果公表は『早くても来年後半になりそうだ』(関係者)という」
いずれにしろ、私たちは税金という形で巨額の赤字を尻拭いさせられる可能性が高い。具体的にいったいどのくらいの額になるのか。
関西大学の宮本勝浩名誉教授(理論経済学、スポーツ経済学)が、独自の試算で「東京五輪・パラリンピックの経済効果と赤字額」を算出している。J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部は、関西大学広報課を通じて宮本氏の詳細な調査報告書を入手した。
宮本氏は、
「本報告書は、東京オリ・パラ開催に賛成とか反対とかの感情的な立場にたって分析したものではなく、責任のある機関が公に発表した金額、数値に基づいて客観的に計算したもの」
としている。詳細なデータと数式が11ページにわたって並んでいるが、結論は次のとおりだ。
(1)東京オリ・パラ組織委員会の赤字額は約900億円となる。
(2)東京都の税収を上回る赤字額は約1兆4077億円となる。これは国の赤字額を上回っている。そして、組織委員会の赤字額約900億円を補填することになれば、約1兆4977億円の赤字となる。
(3)国の赤字額は約8736億円となる。
(4)組織委員会、東京都、国の赤字の総額は約2兆3713億円となる。
そして、宮本氏は報告書をこう結ぶのだった。
「報告書は単純に経済的側面から、東京オリ・パラの赤字額を推計したものであり、東京オリ・パラ開催による『新型コロナ』の感染者や、亡くなった人が増加したことなどによるマイナスの効果や、医療関係者の負担増加などのマイナス面は推計していない。
東京オリ・パラの開催に努力された関係者の方々(医療関係者、ボランティアの方々も含めて)のご尽力に敬意を表すと同時に、これまでの努力の積み重ねを精一杯発揮されたアスリートの方々を称えたい。
ただ、新型コロナ騒ぎのない状況での東京オリ・パラを世界中の人々と楽しむことができなかったことは、誠に残念なことであった」
(福田和郎)