「会社にしがみつくのはむしろ従業員のエゴ」
今回の「45歳定年制」、経済の専門家の間でも賛否が分かれている。『初めての人のための資産運用ガイド』など著作が30冊以上ある、株式会社資産デザイン研究所社長の内藤忍氏は、自身の公式ブログ(9月11日付)「サントリー新浪社長の『45歳定年制』に反発する前にやっておくべきこと」(内藤忍の公式ブログ) で、こう賛同を示した。
「(新浪氏の発言が)反発を招いた理由は『45歳定年』という言葉が一人歩きし、中高年の従業員の切り捨てを行う経営者のエゴと捉えられたからだと思います。しかし、会社からは必要のない人材だと評価されているのに、会社にしがみつくのは、むしろ従業員のエゴと考えることもできます。 新浪氏の発言の真意は、一つの企業にずっと働いていてその会社で活躍が十分にできていない人材を、必要とされる会社に流動化させることによって、企業にとっても従業員にとってもメリットがあるのではないかということではないでしょうか。
伝統のある大企業には、優秀な人材がその能力を発揮できないまま大量に存在しています。一方で、新興企業には優秀な人材がなかなか集まらず、成長の機会を逃しています。このような人材のミスマッチを解消するためには、終身雇用ではなく雇用の流動化が大切なのです。
ただし、日本の会社の終身雇用制は、若い時期に給与水準を低く抑え、中高年になってそれをカバーする給与体系になっています。このような給与体系であれば、1つの会社で、若い時期に自分の評価より低い賃金に甘んじて仕事を続けてきて、いきなり45歳でリセットされたら『はしごはずし』と感じるかもしれません。とは言え、今後経済の環境の変化が大きくなれば、45歳定年制にならなくても、いきなり会社から追い出されるリスクが高まっていきます。
新浪氏の発言に対し感情的な反発をする前にやっておくべきことは、会社に頼らない自分のキャリアプランを考えておくことです」
また、経営コラムニストの横山信弘氏は、多様なキャリアの開発に早めの準備が必要だと評価する。
「『人生100年時代』という表現が日本でも広まったのは5年以上も前の話である。『人生80年時代』の過去の考え方はもう通用しない。『老後』は60歳以降ではなく、80歳以降の時代となったのだ。『人生100年時代』のライフステージでは20~80歳までの仕事ステージを複数に分解している。たとえば60歳近くまで会社に依存すると考えると、パラレルキャリアの道を閉ざすことになる。リスクしかない。
NECが45歳以上の希望退職者を募り、グループで約3000人の削減に踏み切った、いわゆる『黒字リストラ』を実施したのはコロナ禍前である。業績を上方修正したホンダも世代交代を見据えて2000人の希望退職者を募った。長年勤めた会社を突然辞めるのには覚悟が必要だ。だからパラレルキャリアを考えるうえで、会社は早めの準備をさせる義務がある。『100年』と言われた人生が、さらに伸びる可能性も出てきたのだから」