9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に関東大震災が起きてから、もうすぐ100年になろうとしている。また、近年は9月に大型台風が上陸したり、長雨が続いたりして、各地で風水害も発生している。9月は防災、自然災害、気候変動、地球温暖化をテーマにした本を随時、紹介していこう。
プロレスラーの蝶野正洋は、日本消防協会「消防応援団」の一員として、防災活動のPRに努めている。本書「防災減災119」(主婦の友社)は、蝶野さんが企画・発案し、防災アドバイザー(東京消防庁OB)の加藤孝一さんが監修した防災マニュアルだ。
地震、火災、風水害、災害後の4つのパートからなり、119の防災減災のポイントをまとめている。すべてのページにわかりやすいイラストが付いているので、頭にすぐ入る。
「防災減災119」(蝶野正洋企画・発案 加藤孝一監修)主婦の友社
料理中に揺れが来たら、まず頭を守る
蝶野正洋さんは「消防応援団」のかたわら、2014年、「ニューワールドアワーズスポーツ救命協会(NWHSLA)という地域防災・救命救急の啓発を行う組織をつくった。救命救急の講習を受けた際、脳幹出血で亡くなったプロレスラーの同志、橋本真也選手と試合中の事故で亡くなった三沢光晴選手のことが頭に浮かび、AED(自動体外式除細動器)の使用法や心肺蘇生法を知ってもらう消防イベントなどに協力している。
蝶野さんは、命を守るために、まずは自分で自分を助ける「自助」を身につけよう、と本書で訴えている。
119のポイントは、どれも具体的だ。たとえば、キッチンで夕食を料理中に大地震が発生したらどうしたらいいのか? 火を消すことよりも、「まずはダイニングテーブルの下に潜り、頭を守って」とアドバイスしている。揺れが収まった後に火の始末をし、出口を確保。いつでも避難できるよう、玄関のドアや部屋の窓を開ける。その際は飛散した食器やガラスで足をケガしないように、底の厚いスリッパを履く。
1980年代以降は、マイコンメーター(ガス遮断装置付きガスメーター)の普及により、震度5程度以上でガスは自動的に止まるようになった。慌てて火を止めに行くより、身の安全を図ったほうがいい。
トイレの最中に揺れが来たらどうしたらいいのか? 家の中では比較的安全といわれてきたトイレだが、ドアがゆがみ、閉じ込められることもある。「すぐにドアを開けて出口を確保。揺れが収まったら、玄関などの安全な場所へ移動する」。ドライバー1本を用意しておけば、閉じ込められた時にドアをこじ開けるのに役立つそうだ。