海の温暖化と酸性化で、マグロやホタテ、アワビ、ノリも食べられなくなる?【地球温暖化を知る一冊】

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日本近海ものは口に入りにくくなる

   海の温暖化についてはさまざまな報道があり、漠然と知っている人も多いだろう。本書は海の「酸性化」にいち早く警鐘を鳴らしているのが新しい。

   静岡県下田市にある筑波大学の下田臨海実験センターの実験水槽には、3つの水槽があり、二酸化炭素の濃度をそれぞれ現在、今世紀末、来世紀半ばの想定で変えてある。地球温暖化により二酸化炭素が海に溶け出し、酸性化が進むからだ。

   その結果、海の酸性化が進むと、植物プランクトンのサイズが小型化することがわかった。そうすると食物連鎖のステップが増え、生態系の上位にいるブリやマグロ、サケなど大型魚類が成長しにくくなり、漁獲量が減る恐れがあるという。

   海の酸性化は将来の話ではなく、日本近海で実際に酸性化が進み、海水のpHが低下しつつあることが、気象庁の海洋観測で確認されていることを紹介している。わずかな酸性化でも、炭酸カルシウムの殻や骨格を持つ生き物に大きな影響を与える。

   貝類は稚貝の殻が薄くなって捕食されやすくなり生存率が低下した、イソ筋エビでは触角が短くなり折れやすくなって生存率が4割も下がった、バフンウニなどでは左右の腕の長さが非対称になり海中での姿勢制御が難しくなって分布を広げる能力が低下する――などのことが実験で明らかになっている。実際の海では、すでに変化が起き始めている可能性があるという。

   すでに回転寿司のネタの多くは海外から輸入されているが、日本近海ものはますます口に入りにくくなるかもしれない。(渡辺淳悦)

「温暖化で日本の海に何が起こるのか」
山本智之著
講談社ブルーバックス
1210円(税別)

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