JR東が導入する1割安い「オフピーク定期券」 ラッシュ時に乗ったらお金を引かれるの? 担当者に聞いた

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   JR東日本が時間帯によって通勤定期の値段を変える「変動料金制」を導入する。

   特に、ラッシュ時を避ける乗客には1割ほど安くする「オフピーク定期券」も併せて導入して混雑の緩和を図るという。

   しかし、ネットでは、「時間帯で定期の価格が違うってどういうこと? オフピーク定期券を買っても、仕事の都合でラッシュ時に乗ったら料金を引かれちゃうの?」などと疑問に思う人が多い。

   JR東日本の担当者に聞いた。

  • 改札口を通勤定期で通過する乗客
    改札口を通勤定期で通過する乗客
  • 改札口を通勤定期で通過する乗客

乗客分散のため、ラッシュ時は高く、すいている時は安く

   JR東日本の乗客がすいている時間帯の通勤定期の料金を安くする「オフピーク定期券」の導入について、時事通信(9月7日付)「JR東社長、通勤定期値上げに意欲 分散へ『広く薄く負担を』」が、こう伝える。

   「JR東日本の深沢祐二社長は9月7日の定例記者会見で、ラッシュ時の利用分散を促すため検討を進めている通勤定期券の値上げについて、『広く薄く負担をお願いする価格差を設け、利用のシフトを促したい』と意欲を示した。時期は未定だが、ピーク時を避けると安く利用できる「オフピーク定期券」と併せて導入したい考え。

オフピーク定期券導入を発表したJR東日本の深沢祐二社長
オフピーク定期券導入を発表したJR東日本の深沢祐二社長

   JR東は、ラッシュ時とそれ以外で価格差をつける定期券について首都圏での導入を目指しており、深沢氏は『具体的な制度設計を進めていきたい』と述べた。利用分散を促すため、たとえばピーク外の定期券を1割値下げして通勤客の1~2割が利用するようになった場合、通勤定期券の値上げ率は1~2.5%になるという」

   日本経済新聞(9月7日付)「JR東日本、特急料金の変動幅拡大 来春に新幹線など」によると、「オフピーク定期券」の導入は、コロナ禍によるJR東の経営難打開の方策の一つであるとともに、経済界の要望でもあった。

「JR東は2021年3月期に民営化以降初めての連結最終赤字を計上し、22年3月期は黒字転換を見込むものの今年8月の鉄道営業収入もコロナ前の19年同月比で約5割と厳しい状態が続く。同社は国土交通省の認可が必要な通勤定期でも、変動制運賃の導入も検討している。『コロナ下で混雑を回避することも重要になっておりできるだけ早く導入したい』(深沢社長)とする。通勤のピークを減らせればコスト削減が期待でき、収益改善につながる見込みだ」

   さらに同紙によると、

「東京商工会議所は5~6月に企業を対象に通勤などに関する調査を実施した。この調査によると、オフピークに利用する定期券価格を通常より10%下げ、10~20%程度の利用がオフピーク時間帯にずれると仮定すると、通常定期券の価格が1~2.5%程度上昇すると運賃収入を同程度に維持できるとの試算になった。
JR東は総収入を変えない形での変動制料金の制度設計をしたい考え。深沢社長は『通常の定期券は広く薄く負担をお願いしたい。価格差や負担の増加については我々もリサーチをしている』という。ピーク時に必要な車両数や人員配置も減りコスト削減となるため収益性の改善につなげる狙いだ」

   オフピーク時の通勤定期代を1割程度安くしても、他の時間帯の定期代を1~2.5%程度上げるだけで、プラスマイナスゼロになる。そして、殺人的な通勤ラッシュを解消できる。

   また、JR東日本にとっても、乗客のピークのボリュームに合わせていた設備・要員の圧縮につながり、人件費のコスト削減が可能になる。鉄道事業をより持続可能にしていくために欠かせない構造改革というわけだ。

長距離通勤者はオフピーク定期の恩恵を受けられない

混雑が絶えない東京・山手線
混雑が絶えない東京・山手線

   ところで、各駅のオフピークの時間帯はどう決めるのだろうか。参考になりそうなのが、JR東日本が今年3月15日から開始した、Suica定期券の時差通勤でポイント付与する「オフピークポイント」制度だ。

   これは、平日朝のピーク時間帯前後の時間帯に、対象エリアの駅でSuica通勤定期券を使って入場すると、JR各社の共通ポイントである「JPE POINT」がたまるサービス。全国の駅ビル内のさまざまな店で利用できる。

   ポイント還元対象時間帯は駅によって異なり、たとえば東海道線の「平塚」の場合、5時30分~6時30分が早起き時間帯(15ポイント付与)、8時~9時がゆったり時間帯(20ポイント)となる。「横浜」の場合は、6時~7時が早起き時間帯、8時30分~9時30分がゆったり時間帯。それぞれ、その間の時間帯がピーク時(ラッシュ時)というわけだ。

   今回のJR東日本の「オフピーク定期券」の導入について、ネットでは多くの疑問の声がある。たとえば「ヤフコメ」にはこんな意見がみられた。まず、基本的な疑問として――。

「これは乗る時間があらかじめ決まっているのか、ICカードで乗った時間で値段がかわるのか、どっちなのだろう。時間帯指定だと、かなり使いにくい気がするけど」
「携帯電話が出始めた頃、データイムしか使えないとかオフタイムと休日しか使えないとかいうプランがあったけど、そのあと、使えない時間帯の通話料2倍のプランになっていましたね。オフタイム定期券は、ピークタイムは定期券としては利用できず、普通運賃がかかるとかにするのかな?」

   また、長距離通勤者からはこんな不満の声も聞かれた。

「長距離通勤している人はオフピーク定期だとまったく恩恵を受けられないのだよ。乗車時間の大半がオフピーク時間だというのに、乗車時の早朝をオフピーク時間から外しているからです。恩恵を受けるためには、途中下車してオフピーク時間に再乗車しないといけない。今のスイカポイントでの実証実験がまさにそれ」

   また、こんな疑問の声もあった。

「オフピークの定義はラッシュの時間帯を外すと言うことだけで、ラッシュと逆方向の空いている電車でもピークだと高くなるのだろうし、個別計算は無理だろうが、たとえば中央線は快速と各停の混雑率の差が激しく、各停だとラッシュというイメージとはほど遠い。飛行機みたいなダイナミックプライシング(編集部注・AIが需要と供給を予測、混み具合に応じて値段を変動させる)は難しいだろうが、全体的に値上げして、ラッシュにかからない時間に乗り降りした人にポイント付ける今の方法のほうが良い気もします」

乗る時間帯と値段が決められ、その中から乗客が選ぶ

通勤ラッシュの緩和のために導入されるが...(東京の新宿駅の改札口)
通勤ラッシュの緩和のために導入されるが...(東京の新宿駅の改札口)

   いったい、どういう通勤定期になるのか――。こうした疑問に、J‐CASTニュース会社ウォッチ編集部では、JR東日本の広報担当者に話を聞いた。

――どの駅でどの時間帯がオフピーク定期券の「オフピーク」になるかは、今年3月から始めた「オフピークポイントサービス」の各駅の時間になるのでしょうか。

広報担当者「オフピークポイントサービスの時間を参考にするとは思いますが、まだ詳細は何も決まっておりません」

――そもそも基本的な疑問として、オフピーク定期券は乗る時間帯があらかじめ決まっているのでしょうか。それとも、ICカードで乗った時間がわかり、それに応じて値段が変わるものなのでしょうか。

広報担当者「定期券だとまとめて買うわけですから、乗る時間帯と値段があらかじめ決められており、その中からお客さまが選ぶものになります」

――それだと、オフピーク時間帯の安い定期券を購入し、実際はラッシュの時間に乗ったりするような、「ズル」をする人も出たりしないでしょうか。

広報担当者「改札口をどの時間帯に通過したかは、すべてわかります。オフピークポイントサービスの場合も、どの時間に何回通過したかによって回数でポイントを付与する仕組みです。虚偽の申し込みによる場合でも、それと同じように対応することになるかと思いますが、どのような制度設計にするか、まだ具体的なことは何も決まっていません。ただ、切符の場合では、日付が違ったりすると改札口ではじいてしまいます」

――なるほど。何回も違う時間帯に通過すると、改札口で遮断する場合もあるということですか。

広報担当者「それもまだ何も決まっていません」

――オフピーク定期券を買ったのに、会議や取引先の都合などでラッシュ時に乗らなくてはならない場合も起こるでしょう。その場合はどうするのですか。その分のお金を引かれるのでしょうか。

広報担当者「先ほどの虚偽の申請の場合と同じ質問ですね。まだ何も決まっておりません」

――ネットの声では、遠距離通勤の場合は、オフピークの時間がかなり早朝に設定されているため、恩恵にあずかりにくいという声もあります。

広報担当者「駅ごとにオフピークの時間が決まることになりますが、不利かどうかはお客様の主観的な問題になると思います」

――都心とは逆の方向、つまり下りに乗る場合でもオフピーク定期券があるのでしょうか。たとえば、中央線で吉祥寺から新宿方面ではなく立川方面に向かう場合です。かなりガラガラだと思いますが。

広報担当者「オフピークポイントサービスの場合は、乗る駅と乗った時間でポイントが決まります。行く方向は関係ありません。オフピーク定期券は、混雑緩和が目的ですから、行く方向は関係ないと思います」

(福田和郎)

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