我々はこんなにも多くのリスクに囲まれて生きている!【防災を知る一冊】

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社会リスクの危険性が高い

   本書を読んで思ったのは、気象リスクや災害リスク以上に、交通事故や犯罪、感染症など社会リスクの危険性が高いということだ。新型コロナウイルスについても取り上げている。新型コロナウイルスの新規感染者数に毎日、一喜一憂するのは滑稽なことかもしれないが、国民全員に差し迫った明白なリスクだからこそ、関心が高いのだろう。

   東京オリンピックへ反対する人が多かったのも、オリンピックがリスク要因にほかならなかったからだ。

   今年(2021年)3月に出た本なので、7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害については触れていないが、「都市でも起こる土砂災害」の項目を見ると、昭和42(1967)年7月の神戸市・六甲の土砂災害、昭和57(1982)年7月の長崎市の水害、平成26(2014)年8月の広島市の土砂災害など、都市で起きた土砂災害が多いこともわかる。

   傾斜度が15%(9度)以上にある人口集中地区の面積では、横浜市、長崎市、広島市、神戸市、北九州市の順で多いそうだ。面積、人口ともに横浜市が圧倒的に多い。平成25(2013)年までの10年間に市内166か所で、がけ崩れが発生。避難体制の整備が求められている土砂災害警戒区域であったことを指摘している。横浜市在住の人は常に意識したほうがいい。

   冬場に多いのが火災だ。火災原因の1位が放火、2位はたばこ、3位がコンロの順だという。放火がトップというのは意外だった。家の周囲に放火されそうな段ボールや新聞などを置かないようにするほか、放火犯が行動を起こしやすい死角となる場所を作らないのが大事だ。

   最後に「不慮の事故リスク」も見てみよう。平成30(2018)年の統計では、不慮の事故死は4.1万人、うち家庭内の不慮の事故死は1.2万人で、交通事故死の約4倍と多い。

   家庭内では浴槽での溺死や溺水が最も多く3300人、次いで気道閉塞を生じた食物の誤嚥2500人などが多い。また、つまづき・よろめきによる転倒の死者も1000人いる。

   巻末にはリスクの対処法をまとめている。いくつか引用しよう。

・スマートフォンのNHKのニュース・防災アプリを見ると、気象・災害・避難情報を知ることができるし、洪水時の河川状況(ライブのカメラ画像)を見ることができる。
・通電火災とならないよう、電気のブレーカーを切ったり、ガスの元栓を閉めたり、水道の蛇口を閉めてから、避難する。阪神・淡路大震災では多数の家屋が通電火災で被災した。
・鉄道下などのアンダーパスで車が浸水に突入した場合、車内の水深があがる(水圧が小さくなす)まで待ってドアを開けるか、ヘッドレストの金属部分をドアと窓ガラスの隙間に入れて、テコの原理で窓ガラスを割って脱出するかを選択する(浸水中では電気系統のトラブルでパワーウィンドウが作動しないことがあるから)。

   読み終えると、平穏な日常生活を送っていることに感謝するとともに、リスクへの新たな心構えが生まれることだろう。

(渡辺淳悦)

「リスク大全集 災害・社会リスクへの処方箋」
末次忠司著
技報堂出版
2860円(税込)

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