9月1日は「防災の日」。1923(大正12)年9月1日に関東大震災が起きてから、もうすぐ100年になろうとしている。また、近年は9月に大型台風が上陸したり、長雨が続いたりして、各地で風水害も発生している。9月は防災、自然災害、気候変動、地球温暖化をテーマにした本を随時、紹介していこう。
災害は世の中にあるさまざまなリスクの中の一つに過ぎない。そう思った専門家が書いたのが、本書「リスク大全集 災害・社会リスクへの処方箋」(技報堂出版)である。気象リスク、災害リスク、社会リスク、生活リスクの4種類のリスクを対象に、その実態と対策をまとめた。
「リスク大全集 災害・社会リスクへの処方箋」(末次忠司著)技報堂出版
平常時とリスク発生時、リスク発生後
著者の末次忠司さんは、国土交通省国土技術政策総合研究所などを経て、山梨大学大学院教授。専門は河川工学。「これからの都市水害対応ハンドブック」「水害に役立つ減災術」などの著書がある。
本書で取り上げているリスクは以下の4種類。いかに多くのリスクに囲まれて、私たちが生活しているかに気付くと、唖然とするだろう。
・気象リスク 水害(氾濫、土砂災害、高潮)、雷、強風、雪崩、熱中症
・災害リスク 地震(地震、津波、複合災害)、火山(火砕流、溶岩流、噴石)
・社会リスク 交通・飛行機事故、犯罪(誘拐、強盗、空き巣)、火災、化学物質、危険生物、SNS犯罪、食中毒
・生活リスク 溺死、認知症、不慮の事故
これらのリスクについて、平常時とリスク発生時、リスク発生後に分けて書いてあるのがユニークな点である。
たとえば、著者の専門である水害については、主要な水害の概要、水害が発生しやすい場所、地下施設の水害、地下施設の浸水対策、店舗・事業所での浸水対策が平常時の対策として書かれている。
さらにリスク発生時として、情報収集の手段、洪水・氾濫水の挙動、家のまわりの浸水対策、浸水した車からの脱出法などが書かれている。リスク発生後には、水害後の経済支援、住宅手続き、避難所生活、帰宅後に行うことが書かれている。つまり、この1冊があれば、さまざまなリスクの前、リスクの最中、リスクの後のことが分かる仕組みになっている。「リスク大全集」と銘打った由縁だ。