金融マーケットの関心は、米連邦準備制度理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和の縮小)をはじめ、「アフターコロナ」に向けての先進国の動向だ。学生トレーダーも、そこをにらみながらの取引。慶応義塾大学の2Gさんは、「9月21日~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、当局者の発言に注意したい」という。
そうしたなか、早稲田大学のNAKAMURAさんは米ドルでプラスを確保。明治大学の佐藤諒さんは、ユーロ円で利益を得た。一橋大学のボンゴレさんは、コロナ禍のワクチン接種の進展から「上昇が期待できる」と、ニュージーランドドルとオーストラリアドルを選択。コツコツと取引を重ねて利益を得た。
同志社大学のFOXさんは今週も多忙のため、取引できなかった。
米ドルでガッチリ!(早稲田大学 NAKAMURAさん)
FX大学対抗戦をご覧のみなさま、こんにちは。早稲田大学3年のNAKAMURAです。
まずは今週(8月30日週)の振り返りをしていきます。8月24日10時18分 (GMT/グリニッジ標準時プラス0)に、米ドルを0.3Lot buy(買い)した米ドル円を、9月1日10時24日(GMTプラス0)にsell(売り)決済し、プラス1万6356円の確定利益となりました。現在、確定残高は99万1993円となっています。
今週は日本時間9月3日 21時30分に米雇用統計の発表がありました。結果としては、失業率は5.2%と市場予想値と変わりませんでしたが、雇用者(非農業)が市場予想値72.8万人増のところ、実際には23.5万人増と大幅に下回り、一時ドル円は1ドル=109.96円付近から109.61円付近まで下落しました。雇用統計の前に発表されていた、ADP雇用リポートにおいても61.3万人増の市場予想値を大幅に下回り、37.4万人増となっていました。
8月のISMサービス景況感は61.7と市場予想値をわずかに上回り、7月に続いて高水準となりました。物価指数も75.4と高水準でした。
雇用が大幅に下回り、9月のテーパリング(量的緩和の縮小)開始発表の予想は期待感が下がり、11月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での決定が強まったといえるでしょう。サービス業における需要は高い一方、人手と原材料不足が続き、インフレ状態へ繋がっていると考えられます。
雇用統計では特に、レジャーホスピタリティは伸びがゼロとなっており、飲食店予約件数も回復が止まっています。客足の回復が鈍いことが原因であると考えられます。
また、米短期金利は下落していますが、同じく低下するはずの長期金利が上昇しています。テーパリングの遅れにより景気の持続期待が表れているといえるでしょう。2年債利回りも、もともと、早期テーパリング開始を織り込んだ動きとなっていなかったこと、低下が限定的であるとみられていることから、ドル円の下落も限定的であり、レンジの下限の109円を割る可能性も少ないとみられます。
参考リンク:マネックス証券 マネクリ「雇用統計後の米金利と為替を考える」(吉田恒の為替ウイークリー 2021年9月6日)
今後の予定では、9月21日、22日のFOMCに注目しておきたいです。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
米雇用統計はネガティブサプライズとなり、市場参加者を驚かせました。もともと教職員採用分の15~20万人程度の減少があったにもかかわらず、予想は前回値と変わらない数値でしたが、それにしても少ないなという印象。失業給付金の期限切れが雇用増に影響しても良さそうですが、まったく違った結果となりました。
ただ、失業率や前回値は上方修正されるなど、判断に悩む状況。その後に出たISM(Institute for Supply Management)が良い結果となったことから、とりあえず買っておこうという相場でしょうか。
まだまだドル高に疑心暗鬼というのが、9月9日の相場です。ドル円は、8月12日ぶりに終値で110円に乗せました。しかし、翌日には直ぐに売られてしまい「110円は売り」という市場参加者の心理が浮き彫りになったといえそうです。
前週からの損益 1万6356円
9月3日現在 99万1993円
米テーパリングの動向に注意したい(慶応義塾大学 2Gさん)
FX大学対抗戦15週目。今週(8月30日週)も結果的に取引しなかった。本当はトレードしたい気持ちが強かったが、想定より忙しくなってしまい、情報収集をすることができなかった。来週は何とか取引をしたいので、今週の流れと今後の動きを整理しておきたい。
◆ 今週の流れ
8月30日週は、ドル売りが優勢だった。前週末のFRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の講演では、年内の債券購入ペースの縮小開始見通しが示されたが、QE(量的金融緩和策)と金利は切り離して考えるとしており、市場では利上げ開始が遠のいた印象を与えた。
株高とともにドル安の圧力が強まった。今週は米雇用統計を金曜日に控えて、やや動きにくい1週間だったが、ドル安傾向は継続している。水曜日に発表された米ADP雇用統計が2か月連続で予想から大きく下振れる結果にとどまり、ドル売りを誘発した。株式市場はS&P500やナスダック指数が最高値を更新する場面があり、堅調に推移。ドル安とともに円安の流れも鮮明だった。米雇用統計を控えた金曜日、日本では菅首相が総裁選に立候補せずと報じられ、日経平均先物が買われた。一時円売りに反応したが値幅は限定的だった。
政局が動くなかで、9月26日にはドイツでも総選挙が実施される。来週はECB(欧州中央銀行)理事会とともにユーロ関連の話題となりそうだ。8月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を大きく下回る弱い結果となりドル売りが進行。失業率が予想どおり低下したことや、平均時給が予想外に上昇したこともあり、下げ一巡後はいったん値を戻したが、年内のテーパリング(量的緩和の縮小)開始予定にも修正が入るのではとの思惑もあり、その後再びドル売りが広がったと考えられる。
◆ 今後の動き
米雇用統計明けでいつものとおり材料難だが、米連邦準備制度理事会(FRB)のメンバーである各地区連銀総裁の発言には注目しておくべきだと考える。9月21日~22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向けて、当局者が金融政策に関して発言できるのはこの週が最後となるので注意したい。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
雇用統計の悪化は、テーパリング(量的緩和の縮小)の後づれを連想させ、株高継続に影響してそうです。
さて、ECB(欧州中央銀行)では予想どおりのパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の債券購入額の減額を発表しました。ただし、これは一時的であるためラガルド総裁は「テーパリングではなく調整」と明言しました。今後の政策はまったく決まっておらず、12月の会合で大きな決定をすると示唆しました。
ラガルド総裁は、2%のインフレ目標を達成するまで、PEPPが終わった後も、欧州各国及びEU(欧州連合)の発行する債券ほぼすべて購入すると発言しています。つまり、テーパリングの時期は極めて遅くなるといえます。これを考えると、ユーロは主要国の中では一番上値が重くなるということになります。
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
9月3日現在 111万4000円
ユーロ円でプラスを確保(明治大学 佐藤諒さん)
今週(8月30日週)の取引は1回になりました。先週時点でクロス円ペアは急落前の水準まで戻しており、上抜けるか跳ね返されるかに注目していました。ユーロ円、オーストラリアドル円は大きく上抜け、ポンド円・カナダドル円はヨコヨコした展開となった。
下の画像は、ユーロ円4時間足チャートです。
◆ 取引1 ユーロ円
8月31日に急落前水準を強く上抜けたので、買いポジションを持ちました。それから金曜日まで持ち最後の急落で大きく利益を減らしてしまいましたが、4万円のプラスで終えることができました。まだ決済しなくても良かったと思いますが、念のため持ち越しはやめました。
来週はドル円とポンド円、豪ドル円に注目したいと思います。米国8月の雇用統計は良い数字とはいえず、テーパリング(量的緩和の縮小)の開始時期は後退したと思います。これにより、ドル円は下方向に向かうと思うのでレンジした抜けを狙ったトレードをしていきます。
ポンド円は前回高値の水平線上に位置しており反発するかを注視していきたいと思います。最後にオージー円は今最も値動きが激しいのでチャンスがあると思ったら、積極的にエントリーしたいと思います。各国テーパリング議論が進んでいるので、そこも見落とさないようにしたいと思います。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
ECB(欧州中央銀行)前のユーロの上昇を取り、ナイストレードといえます。
さて、今回どこでもコメントしていない豪ドルに関して触れておきましょう。9月7日の豪州中央銀行の決定では週40億ドルペースの国債を購入を、従来の11月から、少なくとも2022年2月中旬まで継続となったことが売りを誘いました。
デルタ発生と行動制限により、GDP(国内総生産)は7~9月期に大幅な減少が見込まれており、失業率も今後数か月で上昇見込みであることが要因のようです。ただし、景気後退は一時的なものと予想というコメントもあり、数か月後には状況が変化すると分析していることが伝わります。
なお、豪州の金融大手ウエストパックは、目先は豪ドルが下落するものの、年末に向けては現在の水準よりも200ポイントほど上昇すると予想しています。
前週からの損益 プラス4万円
9月3日現在 105万5000円
どちらも似た動きNZドル、豪ドルに注目!(一橋大学 ボンゴレさん)
前週(8月23日週)はメキシコペソを中心に取引をしていましたが、今週(30日週)はオセアニア通貨のニュージーランドドル(NZドル)とオーストラリアドル(豪ドル)を中心に取引してみました。米ジャクソンホール会議以降、投資家のリスク選好姿勢が強まり、これらの通貨も買われやすくなったのではと思っています。
ニュージーランドは厳しいロックダウンが敷かれているあいだ、通貨は弱めでしたが、新型コロナウイルスの新規感染者を格段に減少させたことで今後の景気への期待が持てると考えたからです。
オーストラリアは、まずニュージーランドと似たような動きをしているのでは、とチャートを確認したら比較的似通った動きをしていたので一緒に取引をすることを考え、背景がワクチン接種率の進展だったので、こちらも上昇が期待できると思い、選択しました。
前週と同様、チャートを見る時間があり、こまめに指値注文を設定できる夏休みの利点を活かしてこまめに決済を実施しています。
・NZドル
(1)1NZドル=77.5円で買い、77.6円で売り
(2)77.61円で買い、77.66円で売り
(3)77.75円で買い、77.85円で売り
(4)77.83円で買い、77.9円で売り
(5)77.85円で買い、77.91円で売り
(6)77.9円で買い、78.15円で売り
をすべて5万通貨ずつ取引。3万1500円の利益を得ました。
・豪ドル
(1)1豪ドル=80.3円で買い、80.5円で売り
(2)80.65円で買い、80.75円で売り
(3)80.81円で買い、80.95円で売り
(4) 81.2円で買い、81.5円で売り
を、こちらも5万通貨ずつ取引。3万7000円の利益を得ました。
指値注文でした値どおりに約定されるのはデモトレードならではだと思いますが、残り少ない夏休み期間でコツコツと利益を積み立てていければと考えています。
今週の決済益は、スワップポイントも合わせて6万8620円です。
◆ 児山将のワンポイントアドバイス
オセアニア通貨をコツコツと獲得と、ボンゴレさんらしいトレードですね。
さて、チャート形状では豪ドルよりもNZドルのほうが良いことは明らかで、対ドルで3週間ぶり高値を付けています。全国的なロックダウンが検討されているニュージーランドですが、多くの国民は賛成と一致団結の様子がうかがえます。デルタ株などが、多くの国の経済回復を鈍化させるなか、引き続きニュージーランドの早い回復と金融引き締め期待が集まっているようです。
なお、キーウィ銀行(NZ)は、年末までに米ニューヨーク外国為替市場でドルが現在の水準から600ポイント以上上昇する0.77ドルを予想しているそうです。
前週からの損益 6万8620円
9月3日現在 124万7420円
神奈川県出身。
◆ 今週も多忙のため、取引できませんでした(同志社大学 FOXさん)
前週からの損益 プラス・マイナスゼロ
9月3日現在 108万3080円
福岡県出身。
◆100万円増額計画 FX大学対抗戦のルール学生投資連合USIC
・元本100万円のデモトレードです。
・通貨ペアはクロス円取引とします。
・レバレッジは25倍を上限(法令に基づく上限)とします。
・取引の過程で資産が「ゼロ」(元本割れ)になった場合は、その時点でリタイアとなります。
・順位は、11月26日時点の運用損益で決めます。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
http://usic2008.com/
◆100万円増額計画 FX大学対抗戦のルール学生投資連合USIC
・元本100万円のデモトレードです。
・通貨ペアはクロス円取引とします。
・レバレッジは25倍を上限(法令に基づく上限)とします。
・取引の過程で資産が「ゼロ」(元本割れ)になった場合は、その時点でリタイアとなります。
・順位は、11月26日時点の運用損益で決めます。
「学生の金融リテラシー向上」を理念に全国26大学1000人以上で構成。企業団体・官公庁との勉強会の開催、IRコンテストの運営、金融情報誌「SPOCK」を発行する。
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