米国の8月の雇用統計の数字は、非農業部門雇用者数が予想よりかなり低く、結構悪いものでした。
非農業部門雇用者数 23.5万人(予想75万人、前回105.3万人)
失業率 +5.2% (予想+5.2%、前回+5.4%)
平均時給(前月比) +0.6% (予想+0.3%、前回+0.4%)
平均時給(前年比) +4.3% (予想+4.0%、前回+4.0%)
労働参加率 61.7% (前回 61.7%)
ただ、よく見ると二つ、気付くことがあります。平均時給は高い伸びを示しています。企業が人を雇うために高い給与を提示していることがわかります。もう一つ、労働参加率は高まっていません。
つまり、コロナ禍の影響もあるのかもしれませんが、高い給与を提示されても仕事に戻らない人が多いということです。
FRBの二つのマンデート
労働市場に人が戻らないのは、新型コロナウイルス対策として失業保険特別給付があるからであり、働くより失業給付のほうが受け取るお金が大きいからだと解釈されていました。しかし、共和党系の知事の州では9月より前に特別給付を打ち切っていますが、それでも仕事に復帰しない人がかなり多いことが確認されています。そうなると雇用の回復には時間がかかりそうです。
また、雇用が戻らないからといって、景気が悪いわけではないともいえます。景気が良いからこそ、企業は人を雇うために高い給与を提示できるのでしょう。しかし、経済が悪いから雇用が戻らないという考えに固執すると、景気判断を誤ってしまうかもしれません。
つまり、必要以上に長く、金融感政策を続けてしまう可能性があります。
FRB(米連邦準備制度理事会)には、二つのマンデート(資金調達の際、その企業から業務委任を受けること)があります。雇用とインフレです。FOMC(米連邦公開市場委員会)で、金融緩和政策を終了させるには「一段と顕著な進展(Substantial further progress)」が見られることが必要といっていました。
先日の米ジャクソンホール会議で、FRBのパウエル議長は、インフレ面においては「一段と顕著な進展」がすでに実現されたと言いました。そして雇用面においても着実な進展が観測されていると言いましたが、「一段と顕著な進展」にはもう少し足りないというニュアンスでした。
しかし、このまま行けば、雇用面でも条件が満たされ、年内のテーパリング(量的緩和の縮小)開始が可能と言いました。
今、マーケットでは年内テーパリング開始を完全に織り込んでいます。11月スタートというのがコンセンサスです。しかし、テーパリングが実行されたとしても、実際に利上げとなるのはまだまだ先との解釈から、金融マーケットは安心しています。