「日本は狭いようで広かった」
昨年(2020年)の緊急事態宣言と、その後発出された緊急事態宣言にはあまり強い強制力はない。だが、仮に欧米のようなロックダウンが首都圏に発令されれば、首都圏だけではなく日本全体が麻痺し、大きな経済的損失が発生するだろう。
東京直下型地震、南海トラフ地震が首都圏を直撃すれば、実質的にそうした事態も起こり得る。それを回避するには、首都移転と道州制をセットで行い、「新しい日本の形」を造るしかない、というのが高嶋さんの主張だ。
高嶋さんは、「コロナでわかったことの一つは、日本は狭いようで広かったということです。感染状況の格差が、如実にそれを示しています。地震と津波で太平洋岸が大きな被害を受けても、日本海側、あるいは内陸に人口と企業が分散していれば、被害を受けた地域を支えることができます」として、47都道府県という小さな経済単位ではなく、1道7州に近隣の県がまとまって、自立できる地域を作ることを提案している。
クライシス小説の第一人者が、小説ではなく「提言」として書いた内容は示唆に富む。(渡辺淳悦)
「『首都感染』後の日本」
高嶋哲夫著
宝島社
968円(税込)