「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。
9月6日発売の「週刊ダイヤモンド」(2021年9月11日号)の特集は「新階級社会 上級国民と中流貧民」。日本社会は格差社会よりもシビアな階級社会へと変貌。そこへコロナ禍が特定の「階級」へ打撃を与えた、という驚きのレポートをまとめている。
日本社会を5つの階級に分類している。資本家階級は従業員5人以上の企業の経営者・役員で219万人いる。新中間階級はホワイトカラーや大企業エリートで1450万人いる。正規労働者は単純事務職、販売職、サービス職で2194万人。アンダークラスは非正規労働者で913万人。旧中間階級は自営業者や農家で751万人。
新型コロナウイルスの感染拡大は、すべての階級において年収が激減するという結果をもたらしたが、打撃度は階級によって大きなバラつきがあったというのだ。
旧中間階級とアンダークラスに打撃
データを提供したのは、格差問題のスペシャリスト、橋本健二・早稲田大学人間科学学術院教授。旧中間階級とアンダークラスが集中砲火を浴びた、と指摘する。
旧中間階級の世帯の平均年収は2019年には805万円あったのに、20年には678万円と、わずか1年で127万円も激減した。また、アンダークラスも446万円から393万円へと400万円の大台を切った。
負の影響が偏った背景には、その階級の人々が従事している業種の特性があるという。橋本教授は「緊急事態宣言などコロナ対策では、さほど説得力のあるエビデンスもないのに、飲食店、とりわけ酒類を提供する飲食店が狙い撃ちされた。その上、十分な補償も行われなかったため、旧中間階級が経営難に陥った」と解説している。
そして、これらの飲食店や不要不急のものを扱うとされた小売店には、非正規労働者が多く働いている。だから、この二つの階級が打撃を受けたという。
新中間階級でもリストラによる「階級内闘争」が始まっている。ほんの一握りの資本家階級を除いて、すべての階級で下降圧力が高まっている、と指摘している。
パート2では、各社のリストラの実態に迫っている。ホンダは「55歳退職金8000万円」という大盤振る舞いで注目されたが、「大名リストラ」だと揶揄している。高額の退職金とともに優秀な技術者が中国メーカーやEV(電気自動車)参入事業者などへ流出したというのだ。国内正社員の4.6%に相当する2000人が応募したというからインパクトがある。
編集部がまとめた各社のリストラ策によると、ある特徴があるという。それはリストラのターゲットとして、1971~81年ごろに生まれた就職氷河期世代が含まれていることだ。カシオ計算機や中京銀行は、退職者募集の下限を「45歳」に設定している。LIXILやデサントなどは「40歳」だ。苦しみながら「一流企業の正社員」となった「勝ち組エリート」もいま「戦力外」とされている。
非正規労働者よりもさらに立場が弱いギグワーカーにも焦点を当てている。ウーバーイーツの場合、労働者の格付け制度があり、「使えない労働者」と見なされると、次の仕事が回ってきにくかったりアプリの使用が停止したり、「社会的な死」となることもある、と指摘している。
特集では、親の資産を世襲する「上級国民」のカラクリもまとめている。まず、教育面における多額の投資、次に税金の軽減だ。
従来、旧中間階級葉自民党の支持基盤だったが、支持を弱めている、と橋本教授は見ている。コロナ禍の影響を受けたそれぞれの階級が、次の総選挙でどういう判断を下すのか、予想できなかった動きがあるかもしれない。
まだ間に合う米国株超入門
「週刊東洋経済」(2021年9月11号)の特集は「まだ間に合う米国株超入門」。日本株に比べて圧倒的なパフォーマンスを誇る米国株の投資法を指南している。
過去30年で比べると日経平均株価は26%下がったが、米ニューヨーク株式市場のダウ平均株価は13.5倍にもなっている。また、日本株は100株単位からしか買えないが、米国株は1株から買えるので軍資金も少なくて済む。
特集では、米国株はどこで買えるのか、代表的な株価指数は何か、日本株と違う特徴、注意点などの基本を押さえた上で、使えるネット証券を紹介している。
ネット証券を利用すると、米国の個別株やETF(上場投資信託)へも日本語で、低コストで投資できる。SBI証券や楽天証券、マネックス証券などのサービスを比較している。
1株から買えると桐谷さんも驚き
7月に「桐谷さんの米国株入門」(ダイヤモンド社)を出した、投資家の桐谷広人さんにインタビューしている。
桐谷さんは、
「実際に投資してみて驚いたのは、1株から買える点です。ベライゾン株も6000円くらいで買えるんです」
と話し、日本株と同様に米国株でも配当利回りを重視しているという。
現在は買い増そうと思うと、どんどん高値を更新している状態なので、暴落があったときにたくさん買おうと思っているそうだ。「世界経済が発展する限り、米国株は魅力的であり続けると思います」。
ETFや公募投信で始める入門者編、米国株でのiDeco、NISA活用法を紹介している。たとえば、iDecoで買える楽天・全米株式インデック・スファンドの過去3年のリターンは17.58%だ。複数の商品から選べる。
また、3人の専門家が推奨するETF銘柄には、全員がそろって推す、インベスコQQQトラスト・シリーズが入っている。ナスダック100指数への連動をめざすETFだ。個別の銘柄を買う自信がない人にはETFがいいかもしれない。AI、レアアース、アフリカなどテーマ型のETFもあり、ニュースやトレンドに問題意識を持てば、投資したいものがあるという助言を紹介している。
米国経済をマクロで知るためのさまざまな経済指標についても解説している。毎月第1金曜日に発表される雇用統計、毎週発表される新規失業保険申請件数など市場関係者が注目する米国の経済指標をまとめているので、参考になりそうだ。
最高益が見込まれる商社業界
「週刊エコノミスト」(2021年9月14日号)の特集は、「商社 最高益の狂乱」。資源価格上昇を受け、今期は最高益が見込まれる商社業界の課題をレポートしている。
大手商社5社の2021年4~6月期の連結最終(当期)利益は、伊藤忠商事、三井物産、丸紅、住友商事の4社が四半期ベースの最高を更新した。なかでも、三井物産は22年3月期の最終利益を、期初予想の4600億円から6400億円に上方修正した。6000億円を突破すれば商社業界で初となる。同社の増益要因は、鉄鉱石、鉄鋼製品の市況良好だ。その他に北米の自動車販売、トラックリースの好調を挙げている。
資源高で、経営体力が十分な今こそ、各社とも次世代事業の育成に向けて事業ポートフォリオの入れ替えを急いでいる。また、脱炭素社会へ向けて、洋上風力、電池、水素など新エネ、再エネの分野への取り組みを紹介している。
三菱商事はオランダのエネルギー企業「エネコ」を中部電力とともに41億ユーロ(約5000億円)で買収した。三菱商事はそのうち8割を出資した。再エネに強いエネコの営業基盤を活用し、日本やアジアでの事業拡大をめざす。
また、石炭関連の資産売却が加速しているという。伊藤忠商事はコロンビアの一般炭(発電用石炭)ドラモンド炭鉱の権益20%をすべて売却することを発表。三井物産はインドネシアの石炭火力発電事業の持ち分45.5%すべてをタイの企業に売却することで合意。温室効果ガスの削減目標に沿った動きだ。
人材がすべてと言われる商社業界。コロナによる働き方の変化をまとめた記事も目を引いた。新入社員が実務を経験しながら仕事を覚えるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ができないことをチャンスととらえ、さまざまな試みをしていることを紹介している。
三井物産は、オンラインでは限られた指導員や上司に任せるのではなく職場全体でフォローしているという。また、住友商事は「オンライン雑談部屋」を創設、月1回程度の社長ダイレクト・コミュニケーションに海外社員も参加した。
新規取引先の開拓にオンラインでは限界がある、という声がある一方、原則禁止となった国内外の出張や会食禁止で年間100億円規模でコスト削減が進んだという指摘もある。
商社は確実に「アフターコロナ」の事業と働き方に移行したようだ。(渡辺淳悦)