最高益が見込まれる商社業界
「週刊エコノミスト」(2021年9月14日号)の特集は、「商社 最高益の狂乱」。資源価格上昇を受け、今期は最高益が見込まれる商社業界の課題をレポートしている。
大手商社5社の2021年4~6月期の連結最終(当期)利益は、伊藤忠商事、三井物産、丸紅、住友商事の4社が四半期ベースの最高を更新した。なかでも、三井物産は22年3月期の最終利益を、期初予想の4600億円から6400億円に上方修正した。6000億円を突破すれば商社業界で初となる。同社の増益要因は、鉄鉱石、鉄鋼製品の市況良好だ。その他に北米の自動車販売、トラックリースの好調を挙げている。
資源高で、経営体力が十分な今こそ、各社とも次世代事業の育成に向けて事業ポートフォリオの入れ替えを急いでいる。また、脱炭素社会へ向けて、洋上風力、電池、水素など新エネ、再エネの分野への取り組みを紹介している。
三菱商事はオランダのエネルギー企業「エネコ」を中部電力とともに41億ユーロ(約5000億円)で買収した。三菱商事はそのうち8割を出資した。再エネに強いエネコの営業基盤を活用し、日本やアジアでの事業拡大をめざす。
また、石炭関連の資産売却が加速しているという。伊藤忠商事はコロンビアの一般炭(発電用石炭)ドラモンド炭鉱の権益20%をすべて売却することを発表。三井物産はインドネシアの石炭火力発電事業の持ち分45.5%すべてをタイの企業に売却することで合意。温室効果ガスの削減目標に沿った動きだ。
人材がすべてと言われる商社業界。コロナによる働き方の変化をまとめた記事も目を引いた。新入社員が実務を経験しながら仕事を覚えるOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ができないことをチャンスととらえ、さまざまな試みをしていることを紹介している。
三井物産は、オンラインでは限られた指導員や上司に任せるのではなく職場全体でフォローしているという。また、住友商事は「オンライン雑談部屋」を創設、月1回程度の社長ダイレクト・コミュニケーションに海外社員も参加した。
新規取引先の開拓にオンラインでは限界がある、という声がある一方、原則禁止となった国内外の出張や会食禁止で年間100億円規模でコスト削減が進んだという指摘もある。
商社は確実に「アフターコロナ」の事業と働き方に移行したようだ。(渡辺淳悦)