重要なことほど自らの言葉で!
こうした首相のコミュニケーション姿勢と支持率低下から、反面教師として組織リーダーは何を学ぶかですが、ひと言で申し上げれば、「あなたの部下とのコミュニケーションは間違っていませんか」ということです。
第一に、「聞くコミュニケーション」を重視して、それにしっかり応えていますか、ということ。部下からの質問や意見を、無視する、答えない、逃げる、というのは、完全に信頼感を損なう行為であるということを、首相の支持率の低下は教えてくれています。
リーダーはとかく一方的な「話すコミュニケーション」陥りがちですが、上に立つ立場であればあるほど「聞くコミュニケーション」が重要になります。まず質問や意見から逃げないこと、「聞かれたこと」にしっかりと答えること、が重要です。
第二に、コミュニケーションにルールを作らない、ということです。さすがに会社で「社長に対する質問は一人一問限り」という条件を付ける人はいないとは思いますが、極力リーダー自身から、部下とコミュニケーションできる場を設けるということです。
その際のコミュニケーションのあり方に、制限やルールを設けないということが大切です。質問内容を事前に上司がチェックしろとか、こちらから指名した人にだけ質問させろとか、そういうおかしな根回しをすれば、リーダーへの求心力は確実に失われると考えて欲しいところです。
第三に、リーダーは「自分の言葉」で語る、ということが重要です。首相と同じく部下に原稿を用意させて重要な話をするとか、あるいは部下に言いにくい話(たとえば、給与引き下げや人員削減など)を、自身の口から話すことなく、直属の役員や管理者に話をさせるというのも、社員の社長に対する信頼感を損なう原因になるでしょう。
重要なことであればあるほど、リーダーの想いや気持ちを直接社員に自分の言葉で伝えることを大切にして欲しいと思います。
以上のように、首相という一国のリーダーの言動と国民の評価からは、いい意味でも悪い意味でも時代を反映したリーダーのあり方等々学ぶことが多いと思います。
もちろん、今後、仮に次の首相にバトンが渡って支持率に変化があるなら、その要因は何であるのかからも学ぶべきことはあるかもしれません。社長が首相のように自ら辞任に追い込まれるというケースは少ないのかもしれませんが、多数の社員が社長に嫌気して離職を選び、会社が回らなくなるという悲劇は大いにある得ることです。そんな憂き目に会わないためにも、今回は菅首相を反面教師として社長自ら襟を正すいい機会ではないだろうか、と思いつつ政局を眺めている次第です。(大関暁夫)