苛立つ金融庁
みずほFGは旧日本興業、富士、第一勧業の3行が経営統合して2000年に発足。みずほ銀行とみずほコーポレート銀行に再編した初日の2002年4月1日にシステムを統合したが、初日に障害が起き、250万件の口座振替などの遅れや誤処理が発生。11年3月には東日本大震災後の義援金の振り込みの集中に伴う大規模障害で給与振り込みなど116万件の遅延を起こした。
3行統合の「寄り合い所帯」で、まとまりのなさが指摘され続けてきたところで、システムでも旧行の関係(興銀-日立製作所、富士-日本IBM、第一勧銀-富士通)を引きずり、19年夏稼働した新システムもこの3社にNTTデータを加えた4社が開発した。
この複数社相乗りが、今回のトラブルに具体的にどうかかわるかは不明だが、三菱UFJFGが日本IBM、三井住友FGがNECと、それぞれ単独で委託しているのと比べ、システムが複雑になり、責任の所在もあいまいになりがちだとの懸念が絶えなかった。
金融庁は春の障害に関する銀行側の報告を受け、異例の長期検査の最中での新たなトラブルに苛立ちを募らせている。春のトラブル、そして今回の対応、経営陣の役割を徹底的に検証し、最終的に業務改善命令を出すことになる。
金融庁の動きとも連動して、経営責任の明確化は不可避だ。2002年のトラブルではシステム統合を指揮した特別顧問が、11年の際も当時の頭取が、それぞれ引責辞任した。今春の連続トラブルでは、発生前にみずほ銀行の藤原弘治頭取の会長就任を内定していたが、トラブルで撤回。一度は6月中に頭取退任の方向になったが、「再発防止のため当面の留任」として現在に至る。6月にこれを決めた際、坂井FG社長が6か月、藤原頭取が4か月、月額報酬を50%減額するなど、役員11人の減俸処分を発表している。
しかし、「坂井社長の責任は特に思い」(金融庁幹部)との声もあり、原因究明調査、金融庁検査などを踏まえ、一定の時期に坂井氏を含む経営責任について、どうけじめをつけるかも今後の焦点になる。(ジャーナリスト 白井俊郎)