土地条件図とハザードマップ
初めて水害予測図がつくられたのは濃尾平野だそうだ。1956年、「木曽川流域濃尾平野水害地形分類図」がつくられた。三角州(デルタ地帯)を「水はけ不良(危険地帯)、いつも冠水するところ(海面以下)としていた。地図の作製から3年後の昭和34年(1959)、伊勢湾台風が濃尾平野を直撃、被害は三角州を中心に発生した。水害予測の分類どおりだった。
この地図の有効性を知った国土地理院は、「土地条件図(2万5000分の1)」を刊行、太平洋岸、瀬戸内沿岸の平野を中心に計136図幅がつくられた。とりわけ、変形地や人工地形、地盤高などの災害に結びつきやすいか、防災に役立つデータが重要だという。
さらに、1990年代からハザードマップ(被害予測地図)の作製が始まった。土地条件図が、それぞれの場所の土地条件を説明するものであったのに対し、ハザードマップは原因の説明ではなく、危険度と避難を中心にした情報を盛り込んだ地図である。
基本的に、河川洪水・浸水、土砂災害、地震、火山、津波浸水・高潮の5種類の災害を想定している。地図としては市町村単位、都道府県単位、河川流域単位などがあり、いずれもネットで公開されている。河川防災の点では、国土交通省の「防災ポータル」も有用だ。
ハザードマップなどで、自分が住んでいる地域の災害の危険性を知ることも大切だが、そもそもどういう土地であったのか、歴史を知ることも重要だ。
地名の変化にもふれている。小字(こあざ)には、その土地がどんな場所であるかを示したものも少なくない。だが、町村合併や区画整理、住居表示の導入などにより、地名が変わることもある。元々の地名は何であったかを調べてみるのも防災の一つかもしれない。
「水」を連想させる地名には要注意だ。(渡辺淳悦)
「地形と日本人 私たちはどこに暮らしてきたか」 金田章裕著 日経BP 990円(税込)