「盲導犬はGoの指示が出ても、危険があると従わない」
今回のトヨタの自動運転車の事故について、インターネット上ではさまざまな意見が飛び交った。
自動車ジャーナリストの小沢コージ氏は、こう指摘した。
「失敗は失敗と認め、謝罪はするべきだろう。とことん原因を追究し、2度と同じミスを起こさないようにする。だが、ここで自動運転に対する実験をすべて否定するのは絶対に間違いだ。技術に完全はなく、特に先進技術はそう。どれだけ宇宙開発で人の命が失われたのか。100%、120%の安全を求めると(日本は何かと求めがち)何もできなくなり、その国はいろんな面で立ち遅れてしまう。コロナのワクチン開発が遅れたのも、そういう一面もあるはず。
今後、自動運転化が進むうえで間違いなく、このような事が再び起こりうる。全体として進化しているのか、世界は何を求めて動いているのかを国民全体が把握し、理解する必要がある。リーダーシップが必要なのはまさにこういう時だ」
自動車ライターの平塚直樹氏も、こう指摘した。
「実用化が期待される完全自動運転車は、車両がさまざまな情報を認識し制御することで、『人為的ミス』をなくし、将来の『交通事故ゼロ』に貢献することも期待されています。ただし、やはり現状の技術では、何らかの人による運用は不可欠のようです。たとえば、小田急電鉄が江ノ島で2018年から実施している自動運転バスの実証実験。2019年の取材時は、バスの目となるカメラやセンサーは、遠方の道路状況などは認識できるが、逆に停車中などにバスの直近や真下に犬や猫がいても認識できない可能性があるとのことでした。 また、仮にシステムが完全に周囲の状況を認識し安全な運行が可能になったとしても、たとえば車内に急病人が出た場合などは、乗務員ゼロでは迅速な対応ができないという課題もあります。(トヨタのケースは)残念な事故でしたが、今回を教訓に、運用面も含め今後の改善につながればと思います」
また、こんな疑問の意見も多かった。
「自動運転ゆえに起きたわけではないですよね。バスは人を検知して停止したのに、オペレーターがボタンを押して発車させて事故になったのだから。渡りそうな歩行者がいるのがわかっているなら、歩行者が渡るのを待ってから発進だよ。たぶん、オペレーターはふだんから公道でクルマ優先の運転しているのだろうと思う。盲導犬はハーネスを持つ人がGoを指示しても、危険があると判断すると指示には従わない。そういう装備を付けないといけなかったと思う」
「クルマが危険を感知していても、オペレーターが発進ボタンを押せば動くというシステムに問題がある。自動運転車側が危険を察知したら、人がいくら進めと命令しても動かないシステムにするべきです(せめて車外で安全を確認・確保しないと動かないシステムにしないと)。人は間違いを起こすことを前提にしないといけません」
「ヒューマンエラーは起こって当然という思想でシステムを作ることは、欧米ではかなり進んでいますが、日本は遅れている」
一方で、自動運転車に対する期待の声が多かった。
「自動運転が実用化されると、田舎の年配の人は助かるよ。特に免許を返納して欲しいと言われる世代は。事故が圧倒的に減るだろうからね。ただ、事故はゼロにはできない。特にメディアは自動運転の99%のメリットを報道せずに、1%のデメリットを大々的に報道する。自動運転よりも、手動運転で毎日多くの事故が起きているのに...」
「自動運転ランキング世界1位のウェイモ(編集部注:グーグル傘下の技術者たちが起業)が、ついに今年8月からサンフランシスコ市で、無人のロボタクシーのサービスを始めました。ウェイモだって事故を起こしています。それでも自動運転は必要だと思われているから、市当局から運行を許可されているのです」
「自動運転が未だに実用化されない一番の理由はこれだ。自動運転車が事故を起こした時に誰が責任を取るのかが明確にできない。クルマの所有者なのか、クルマの運用者なのか、クルマの開発者なのか。一般販売になると、誰が果たして責任を持つのかという問題が出てくる」
(福田和郎)