自動運転化への流れが逆戻りしてしまう
自動車ジャーナリストの桃田健史氏も「JBpress」(9月1日付)「トヨタ自動運転車事故、目の前に叩きつけられた厳しい現実」という記事の中で、トヨタをはじめ自動車業界が抱える課題を、こう指摘した。
「全国各地で近年、路線バスやタクシーの運転手の高齢化が進み、新たな成り手を見つけることも難しくなってきた。こうした状況を打開するため、搭乗員がいない自動運転バスや自動運転タクシーへの期待が高まっている。だが現状では、今回の選手村での接触事故への対策に見られるように、安心・安全を確保するためには、まだまだ人によるサポートが欠かせないことがわかる。
そんな厳しい現実を目の前に叩きつけられたような思いがする。自動運転技術は確かに必要だが、トヨタを含めた自動車産業界には、『死亡事故ゼロを実現するためには自動運転技術が欠かせない』という認識が存在する。そこには、死亡事故の多くが運転者の運転判断ミスや運転操作ミスによるものだという大前提がある。
確かに、完全自動運転まで至らなくても、自動運転技術を活用した高度な運転支援システムが事故発生を軽減しているとのエビデンスもある。今回のパラリンピック選手村内での接触事故においても、自動ブレーキが作動したことで接触時の速度が抑制されたことは事実だ。自動ブレーキの作動によって、接触した歩行者の負傷の度合いが抑えられた可能性もある」
そして、今回の事故によって自動運転化への流れが逆戻りしてしまうことないよう、桃田氏は原因の究明を急ぐよう、こう訴えるのだった。
「筆者は公道で一般車両と混流して走る実証試験車に、体験乗車する機会があるが、その技術進化の速さに驚かされることが多い。その上で今回の接触事故を踏まえて、単なる技術論だけではなく、自動運転の社会との関係があるべき姿について、関係者はいま一度深く考えるべき時期ではないだろうか」