パラリンピック選手村こそ現実の道路に近い
今回の事故で、自動運転車の現況について厳しい現実を見せつけた、と指摘するのは産経新聞(9月3日付)「自動運転実用化へ課題 トヨタのバス接触事故『パラ選手村こそ現実に近い』」だ。こう報じている。
「トヨタ自動車の自動運転バス『eパレット』の接触事故は、けがをした選手が競技を棄権するといった最悪の事態に発展、事故原因も捜査中だ。トヨタは障害者への配慮が足らなかったとするが、有識者からはパラリンピックの選手村こそ、現実の環境に近いとの指摘も上がる。自動運転の実用化に向け、課題の洗い出しが急務だ。
記者団の取材に応じた豊田章男社長は『パラリンピック会場なので、ひょっとしてという想像力、配慮が欠けていた』と述べた。しかし、自動運転に詳しい国際自動車ジャーナリストの清水和夫氏は『今回の事故を特殊なケースとしてとらえるべきではない』と話す。一般の道路でも泥酔した人やスマートフォンを見ながら横断する人はいるからで、『事故を教訓に課題を洗い出すことが重要だ』と指摘する」
産経新聞は、今回の事故に対するトヨタ自動車の姿勢も、こう批判したのだった。
「今回の事故では情報発信のあり方も検証が求められそうだ。選手の出場機会を奪うという重大な事案にも関わらず、トヨタが事故を公表したのは翌日になってから。しかも、自社サイト『トヨタイムズ』で状況を説明した後に、豊田氏がマスコミの取材に応じただけで、正式な記者会見の場は設けていない。
警察が捜査中の案件で詳細な説明が難しいとの事情はあるが、自動運転に対する国民の理解はまだ十分ではない。自動運転は事故の発生率を飛躍的に下げることが期待される一方で、事故リスクをゼロにすることは不可能だ。それだけに事故についての十分な説明は、国民が新たな技術を受け入れる素地を作るうえでも重要で、業界をリードする企業としての対応が求められている」