稲盛和夫さんや王貞治さん、山中伸弥さんが語った人生哲学
――渋沢栄一には、ずいぶん助けられたようですね。
定保さん「コロナ禍での経営、そして建て替え計画では、渋沢翁の言葉に背中を押してもらいました。なにしろ初代会長ですから。会長職を退いた後にも『君たちが丁寧によく尽くしてくれれば、世界中から集まり、世界の隅々に帰って行く人達に、日本を忘れずに帰らせ、一生日本をなつかしく思い出させることのできる、国家のためにも非常に大切な仕事である。精進してやってくださいよ』と従業員に言葉を残しています。つまりは、100年以上前から観光立国を訴えていたということです」
――渋沢栄一の話ばかりになりましたが、他にオススメの本はありませんか。
定保さん「『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(到知出版)をお勧めします。稲盛和夫さん、王貞治さん、山中伸弥さんら各界の方々が人生哲学を語った本です」
――社員にオススメの本はありますか?
定保さん「『ビビる大木、渋沢栄一を語る 僕が学んだ「45の教え」』(プレジデント社)も読みやすくまとまっていると思います」
最後まで、渋沢栄一についての本の話題になった。通常120人ほどの新入社員が30人に減ったというところに、コロナの影響の大きさがうかがえた。
定保さんに好きな小説や作家についてお尋ねしたが、なかなか名前を挙げなかった。多くの作家や著名人が利用する帝国ホテル。固有名詞を出すことを控えるのはホテルマンとしての「わきまえ」なのだろう。(渡辺淳悦)
プロフィール
定保 英弥(さだやす・ひでや)
帝国ホテル株式会社
代表取締役社長
1984年に学習院大学経済学部卒業、帝国ホテル入社。宴会部、営業部、宿泊部などを経て、2009年に帝国ホテル東京総支配人に就任。13年から現職。
1961年生まれ。