「ミュー株」......。
名前こそ、ポケモンのキャラクターっぽく可愛らしい感じだが、恐ろしい変異ウイルスがすでに日本に侵入していることがわかった。
いったい、どれほど危険なのか。海外メディアの報道から探ってみると――。
いずれワクチンが効かない「怪物ウイルス」が出る?
NBCニュース(9月1日付)が、こう報じた。「What is a Variant of Interest? A Breakdown as WHO Adds New'Mu'Variant to Watch List」(注目すべき変異株とは何か? WHOがウォッチリストに新しい「Mu」株を追加した理由)で、研究者たちの意見を集めている。
NBCニュースの取材を受けたシカゴ公衆衛生局のアリソン・アーワディ博士はこう語った。
「おそらく数週間ごとにミュー株のような『注目すべき変異株』と呼ばれる変異ウイルスが世界中に生まれたり、消えたりしていることでしょう。この『注目すべき変異株』がデルタ株のような『懸念すべき変異株』に変わる瞬間はどういう時でしょうか。『ワクチンがあまりうまく機能しなかった』という時です。そのため、ミュー株がどう変化していくか、追跡していかなくてはなりません。
現在、米国で最も『懸念されている変異株』はデルタ株で、患者の99%を占めています。でも、私が心配しているのは『懸念されている変異株』よりもっと危険な『重大な結果を及ぼす変異株』の登場なのです。そうなったら大変なことになります。そうなる前に、私たちはワクチンが、特に入院や死亡に対して十分に効果的であることを訴えて、ワクチン接種を呼びかけています」
つまり、変異ウイルスは「ミュー株」も含めて、絶えずウォッチしないと、数週間ごとに変化していく。また、ワクチン接種を軽視すると、そのうち本当にワクチンが効かなくなる「重大な結果を及ぼす変異ウイルス」が登場するかもしれないというわけだ。
しかし、米国最大級の健康ニュースサイト「health.com」(ヘルスコム)は、楽観的な見方を紹介している。9月1日付の「New COVID-19 Mu Variant Named a 'Variant of Interest'-Here's What to Know」(『ミュー』という名前の新しい『注目すべき変異株』について知っておくべきこと)という記事で、こう説明している。
「WHOによると、ミュー株は『免疫回避の潜在的な特性を示す一連の変異を持っている』とのこと。しかし、どの程度心配する必要がありますか? ミュー株は現在、(ラムダ株など)ほかの『注目すべき変異株』と違って普及していません。世界の感染者の0.1%未満にすぎません。また、WHOと米疾病予防管理センター(CDC)とでは、変異株の危険性の基準が違っており、ミュー株は今のところ、 CDCの『注目すべき変異株』のリストに含まれる予定はないとのことです」
「health.com」の取材に応じた、感染症医学が専門のアメシュ・アダルジャ・ジョンズ・ホプキンス大学教授は、こう答えた。
「現時点では、ミュー株について人々はそれほど心配するべきではありません。変異株は継続的に生成されています。また、ミュー株がデルタ株よりも適合して、それを追い抜くことができる可能性は低いでしょう」
米国では陽性者の99%がデルタ株なので、それ以外の変異株はあまり眼中にないようだ。そして、「health.com」はこう結んでいる。
「ミュー株から身を守る最善の方法は、ほかの変異株から身を守る方法と本質的に同じだと、専門家たちは語っています。完全にワクチンを接種し、さらにブースターショット(3度目のワクチン接種)に関するガイドラインに従うこと。中程度または高レベルの新型コロナが蔓延している屋内エリアでは、頻繁に手を洗い、マスクを着用することも重要です。そして、可能であれば、専門家たちは『群衆を避ける』ことを勧めています」
英国の報告では寒くなるとデルタ株を追い抜くか
一方、英紙ザ・ガーディアン(9月1日付)「WHO monitoring new coronavirus variant named Mu」(WHO はミューと名付けた新たな変異株を監視している)によると、これからの季節はミュー株に警戒すべきだとこう伝える。
「英国公衆衛生庁の報告によると、ミュー株はほとんどがロンドンと20代の人々で発見された。陽性となった人の中には、ワクチンを1回または2回接種した人もいた。実験室での研究では、ワクチンに対して、少なくともベータ株と同じくらい耐性があった。しかし、ミュー株がもたらす脅威の程度は非常に不確実だ。特に急速に拡大しているデルタ株を凌駕しているという証拠はなく、より伝染性が高いとは思われないと、英国公衆衛生庁の報告書は述べているが、次のように警告している。
『ミュー株に関する懸念の一部は、ミュー株が持つ特定の突然変異に由来する。1つの遺伝的変化であるP681H変異は、英国で最初に検出されたアルファ株に見られ、より速い伝達に関連している。E484KやK417Nを含む他の遺伝的変化は、ウイルスが免疫防御を回避するのに役立つ可能性があり、免疫が秋に上昇するにつれて、ミュー株がデルタ株よりも有利になる可能性がある』」。
新型コロナウイルスは寒くなると、活発化する特性を持っていると言われるが、ミュー株はその特性がデルタ株より強い可能性があり、これからの季節が要注意だとうわけだ。
(福田和郎)