「ミュー株」......。
名前こそ、ポケモンのキャラクターっぽく可愛らしい感じだが、恐ろしい変異ウイルスがすでに日本に侵入していることがわかった。
いったい、どれほど危険なのか。海外メディアの報道から探ってみると――。
WHOが「危険度ナンバー2」に指定した新顔
新たに登場した「ミュー株」の脅威について、NHKニュース(9月2日付)「変異ウイルス『ミュー株』国内初確認 WHO『ワクチンに影響も』」が、こう伝える。
「今年7月にかけて空港の検疫所で新型コロナウイルスの検査を受けて陽性と確認された2人が、WHO(世界保健機関)が『注目すべき変異株』に指定した変異ウイルスの『ミュー株』に感染していたことがわかりました。国内で確認されたのは初めてです。
『ミュー株』は南米やヨーロッパで報告され、WHOは8月30日、ワクチンの効果や感染力に影響を与える可能性などがある『VOI=注目すべき変異株』に位置づけました。厚生労働省が、検疫の検査で採取された検体について遺伝子解析の結果をさかのぼって調べたところ、ことし6月26日にUAE=アラブ首長国連邦から成田空港に到着した40代の女性と、7月5日にイギリスから羽田空港に到着した50代の女性の2人がミュー株に感染していたことがわかったということです。
国立感染症研究所の脇田隆字所長は『さまざまな変異ウイルスが出てくるが、従来のウイルスを押しのけて拡大する状況があれば注意が必要で、情報を集めていく必要がある』としています。WHOによりますと、ミュー株はワクチンの効果に影響を与える可能性があると指摘されていて、今年1月にコロンビアで初めて確認されて以降、30か国以上で感染が報告されています」
6月下旬と7月初めといえば、東京五輪が始まる前。ネット上では「なぜ今ごろ発表するのか。東京五輪のために隠していたの?」と疑問視する声もあるが、じつは違う。
読売新聞(9月2日付)「コロンビア由来の『ミュー株』、6~7月に国内2空港で確認... ワクチン効果低下も」が、こう伝える。
「世界保健機関(WHO)が8月30日、警戒度が2番目に高い『注目すべき変異株(VOI)』としてミュー株を位置付けたため、厚生労働省が今までミュー株だった人がいたかを調べ直したところ、2人が該当した」
これまで、比較的知名度が低かったミュー株が急に注目される存在になったため、あわてて日本に入っていないかどうか、調べ直したというわけだ。
ちなみに、現在WHOが分類している変異ウイルスには、最も危険性が高い「懸念される変異株(VOC)」として、アルファ株(英国由来)とベータ株(南アフリカ由来)、ガンマ株(ブラジル由来)、デルタ株(インド由来)の4種がある。
その次に警戒されるのが、今回ミュー株が入った「注目すべき変異株(VOI)」だが、ほかにラムダ株(ペルー由来)、カッパ株(インド由来)などがあり、ミュー株と合わせて、計5種になった。
早くもトレンド入り、発展系変異株は「ミュウツー」に?
ところで、この「ミュー株」。ポケモンキャラクターに似た名前の可愛らしさもあってか、ネット上では早くもトレンド入りした。
「『ミュー』の発展系の変異株は『ミュウツー』になるのか」
などの声も上がっているが、危険性はどのくらいあるのだろうか。
国連(UN)の公式サイト「UNニュース」(9月1日付)「COVID-19: New Mu variant could be more vaccine-resistant」(新型コロナ:新しい変異ウイルス『ミュー』はワクチン耐性がより強い可能性がある)が、WHOが「ミュー株」を「注目すべき変異株」に入れた経緯を、こう伝えている。
「ミュー株は2021年1月にコロンビアで最初に特定され、それ以来、南米とヨーロッパで散発的な発生があった。これまでの新型コロナウイルスの世界的な有病率に占める割合は0.1%未満にすぎないが、コロンビアとエクアドルでは一貫して増加しており、現在、それぞれ約39%と13%を占めるに至っている。コロンビアではミュー株によって、少なくても12万4811人が死亡した。
世界的にデルタ株が席巻するなかで、ほとんどの国でデルタ株以外の亜種(変異株)が高い有病率を示す例はないため、このミュー株の危険性は十分に考慮して調査・追跡されるべきだ。なぜ、南米ではミュー株がデルタ株と『共存』できているのか、突きとめる必要がある」
そしてミュー株の未知の危険性について、こう記した。
「ミュー株には自然免疫を示す遺伝子変異が含まれており、現在のワクチンやモノクローナル抗体治療が、うまく機能しない可能性がある。南アフリカで最初に発見されたベータ株と同様の方法で免疫防御を回避する可能性がある。ミュー株は、現在のワクチンや治療に対してより伝染性、より致命的、またはより耐性があるかどう。か確認するために、さらに研究する必要がある」
いずれにしろわからないことだらけだが、徹底的に追跡調査をする必要があると、強調している。
(福田和郎)