ウイルス量が1000倍、しかも細胞にくっつきやすい
確かに現在、40代や50代の入院患者どころか、20代~30代でも短期間で重症化。なかには亡くなるケースが続出している。千葉県内でも8月18日、一人で自宅療養中の20代男性の死亡が確認された。男性は40度の発熱があり、陽性を確認したが、受診した医療機関が軽症と判断、「入院の必要なし」とされた。保健所が一度も直接連絡を取らないまま、2日後に急速に容体が悪化したらしい。「連絡が取れない」という家族からの通報で救急隊が駆け付け、死亡しているのが見つかった。
20代の死亡は千葉県だけでも2人目で、全国的に珍しいことではなくなった。このようになぜ若い世代でも急速に悪化するのか。毎日新聞が続ける。
「デルタ株のスパイクたんぱく質にはL452R以外にも複数の変異がある。東京大医科学研究所などの研究チームはそのうちの一つ、681番目のアミノ酸がプロリン(P)からアルギニン(R)に変異した『P681R』に注目。(この変異は)感染した細胞は周囲の正常な細胞と融合し損傷させやすくなり、損傷した細胞の範囲は従来株の平均の2.7倍に広がった。また、このウイルスをハムスターに感染させたところ、従来株より体重が減少し、肺機能が低下することも判明した。
佐藤佳・東大医科研准教授は『変異によって細胞膜と融合する能力が上がったため、感染細胞が周りの細胞とくっつきやすくなった。ウイルスが体内に広がりやすく重症化につながっていると考えられる』と話す。実際、中国の研究グループは7月、患者の体内のウイルス量をPCR検査で調べた結果、デルタ株の感染者の体内のウイルス量が従来のウイルスに比べ平均1000倍以上で、増殖スピードも速かったとする研究論文を公表した。体内のウイルス量の増加が重症化と関係している可能性がある」
この従来株より「1000倍もウイルスの量が多い」という衝撃的な研究が発表されると、テレビ番組でも取り上げられた。TBS系の「サンデーモーニング」(8月29日付)では、司会の関口宏さんが驚きを隠せず「これはホントですか?」と、元国立感染症研究所主任研究官の小坂健氏に聞くと、こう答えた。
「やっぱりデルタ株は従来の株より増殖が早いし、ウイルス量も多いと言われている。そうすると、今までは感染しなかった場合でも、1000倍以上のウイルスを持っているとあっという間にうつってしまう。
今までうつらなかったような人でもうつることがありうるわけです。デルタ株、特に夏の対策としてはワクチンとマスクと換気の3つが柱になる。夏はエアコンでほとんど換気がされない。暖房と違って風が下に落ちてくるので、より感染しやすい。やっぱり換気できちんと回してあげることが非常に大事になります」
と、部屋の換気の重要性を訴えていた。
(福田和郎)