日産自動車の人気スポーツカー「Z」(日本名「フェアレディZ」)の新型車がいよいよ2022年に発売される。
経営不振が続いていた日産は2022年3月期の業績見通しを600億円の黒字(これまでの見通しは600億円の赤字)と、3年ぶりの黒字転換を発表したばかりとあって、ニューZが日産復活の象徴になるか、注目される。
「7代目」発表された米国仕様はガソリン車
日産は2021年8月18日、ニューヨークで開催した特別イベントで、米国市場向けモデルの新型Zを初公開した。日本仕様のフェアレディZも遠からず発表される見込みで、08年以来14年ぶりの全面改良であり、1969年の初代から数えて7代目になる。
日産は新型Zのプロトタイプを20年9月に発表していたが、エンジンの排気量や最高出力などのスペックや発売時期を明らかにしていなかった。
米国仕様の新型Zはガソリン車のみで、スカイライン400Rと同じVR30DDTTエンジンを搭載する。排気量は6代目の3.7リッターから3.0リッター V6ツインターボとなり、最高出力400馬力(405PS)、最大トルクは475Nmと、6代目(336PS、365Nm)をしのぐZ史上最強になる。9速オートマチック車に加え、走りにこだわる顧客向けに6速マニュアル車を存続させた。
外観はヘッドライトや車体後部の形状など初代(S30型)のシルエットやモチーフを引き継いた伝統あふれるデザインになっている。
価格は4万ドル(約440万円)前後からとしている。アシュワニ・グプタCOO(最高執行責任者)は発表イベントで、「スムーズで、パワフルで、どんな時でも力強く走る」とPRした。
新車の発表、発売の時期、地域(国)は戦略を反映する。今回、米国での発表を先行したのは、ファンが多く、市場規模の大きい米国で、まず話題づくりをしようという狙いだろう。発売時期も、米国で22年春とした。
各メディアの報道から、日本では米国に続いて発売することになる見通しだ。今冬に具体的なスケジュールを明らかにするとしており、年内にもはっきりするだろう。
「5代目Z」は日産V字復活の象徴だったが......
特に日本におけるフェアレディZは日産のイメージを代表する存在だ。Zと並ぶGT-Rも同様だが、こうしたスポーツカーは開発費や生産コストがかかり、人気があっても販売台数は限られるため、ビジネスとして成り立たせるのは簡単ではない。
実際、Zの場合、日産が経営不振に陥り、ルノーから乗り込んできたカルロス・ゴーン社長(当時)がコストカットの一環として2000年に4代目の生産を終了し、絶版となった。
その後、経営がV字回復したことから、2002年に5代目が復活した経緯がある。5代目Zは「日産復活」の象徴と言われた。
今回はどうか――。日産は目下、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)の号令の下、「ニッサン・ネクスト」と称する構造改革計画を進めていて、生産能力2割削減して年間540万台体制とし、販売車種も23年度までに2割削減して競争力のある車種に絞り込むという課題に取り組んでいる。環境規制強化の流れのなか、電動(EV)化も待ったなしだ。
そんな状況の中で、今回、日産がガソリンエンジンだけの新型Zを発売するというのは、クルマ好きの心をくすぐるもので、ある種の英断といえる。
今のところ、発表を受けた自動車ジャーナリズムの評価も上々の7代目Z。「社内にも刺激を与え、士気は上がっている」(日産関係者)といい、20年前の5代目同様、日産復活の象徴にとの期待を集める。
ただ、J-CAST会社ウォッチ「海外の新車販売が好調、日産が3年ぶりに黒字転換も『楽観視』できず...... 不安材料少なくなく」(2021年8月11日付)でも書いたように、黒字転換の見通しとなったとはいえ、経営上の課題は山積している。ニューZの成否は、業績が着実に回復するかにかかっているのは、言うまでもない。(ジャーナリスト 済田経夫)