「日本は一段と厳しい状況に陥る」
今後の見通しも「明かり」は見えない。ワクチン接種の加速で7~9月期以降は経済活動が本格的に回復に向かい、GDPは年内にはコロナ前の水準を回復するというのが政府のシナリオだ。西村康稔経済再生担当相はGDP発表の会見で「見通しを変える必要はない」と」強弁したが、4度目の緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が拡大、延長されており、むしろ東京などで「災害級」「崩壊」という声も上がるような医療体制のひっ迫する中で、消費の回復は当面期待薄。
感染が収まってくれば、抑えられてきた消費が反動で急拡大する「リベンジ消費」への期待は大きいが、あるとしても、後ずれは避けられないところだ。
輸出増という恩恵を日本にもたらしてきた海外経済にも陰りが見える。デルタ株が猛威を振るい、欧米で新規感染者数がここにきて日本を上回るペースで増えており、再度の経済活動の抑制の動きも出ている。
アジアでは感染拡大で工場の操業が止まるなどの混乱が広がり、日本にも部品調達の遅れなどの影響が出始めており、たとえばトヨタ自動車は9月の世界生産を4割減らすという。
国際通貨基金(IMF)は7月末に発表した世界経済見通しで、先進国全体の2021年の成長率を5.6%と0.5ポイント上方修正した中で、日本は2.8%と0.5ポイント下方修正した。その後、デルタ株で世界全体、先進国全体も下振れの恐れが出てきており、ただでさえ出遅れていた日本は、一段と厳しい状況になる可能性もある。(ジャーナリスト 白井俊郎)