好調な企業業績、個人消費は伸び悩み
五輪の経済への効果が議論にならないレベルだった一方、引き続きコロナ禍の影響が経済を大きく左右する構図が続いている。
五輪が終わり、全体に日本経済は低迷が続き、コロナ禍前レベルの回復が遅れる一方、企業業績は好調というのが、現在の特徴だ。
まず、良いほうを見ておこう。SMBC日興証券の集計では、東証1部上場の3月期決算の企業(金融、及び金額が大きく振れも大きいソフトバンクグループを除く)の21年4~6月期決算は、最終利益が前年同期の5.2倍になり、うち製造業が12.2倍、非製造業が2.7倍と、製造業の回復ぶりが顕著だ。
22年3月期通期の見通しも全体で前期比44.5%増、製造業が32.4%増、非製造業が66.7%増を見込んでいる。
日産自動車が通期予想で最終損益が従来の600億円の赤字から600億円の黒字転換、日本製鉄が黒字を従来予想の2400億円から3700億円に上方修正するなど製造業で上方修正が相次ぐ。いち早く新型コロナウイルスを抑え込んだ中国をはじめ、ワクチン接種の進展で経済活動が正常化に向かう海外の需要を取り込んだ効果が大きい。
非製造業でも、合理化に加え、海外経済回復の恩恵を受けた海運が、日本郵船の予想黒字額の上方修正(3500億円から5000億円に)など好調だが、航空業界は赤字から脱する見通しは立たず、鉄道など陸運は通期ではやっと黒字を確保できそうという程度で、小売りやサービスなども厳しい状況が続くというように、明暗が分かれる。
こうした明暗の偏りがGDP統計にも出ている。21年4~6月期のGDP第1次速報(8月16日発表)は、物価の変動を除いた実質で、前期(1~3月期)比年率換算1.3%増と、2四半期ぶりにプラスにはなったが、1~3月期に3.7%減と大きく落ち込んだ分を取り戻せなかった。実額(年換算)は約539兆円と、コロナ禍前の19年10~12月期の約547兆円を8兆円以上も下回る。
不振の最大の要因はGDPの半分以上を占める個人消費の弱さだ。4~6月期は0.8%増と2四半期ぶりにプラスにはなったが回復力は弱い。3度目の緊急事態宣言の時期と重なるなか、巣ごもり消費に加え、自粛疲れで一部の消費が持ち直し、辛うじてプラスを確保したといえる。
これに対して好調だったのは設備投資で、テレワークへの対応などにより1.7%伸びた。輸出も海外経済の回復を受けて2.9%増と4四半期連続でプラスになった。ただ、ワクチン確保などがあって輸入も5.1%の大幅増になり、輸出入を差し引いた外需としては0.3%減とマイナスに沈んだ。