「家計や家事をどうすべきか、まず夫婦で話し合おう」
――回答者の中で特に多かったのは、「夫の年収が500万円では、妻も働かないと無理だ」「節約にも限界があるし、節約は心が貧しくなる」という意見です。
川上さん「金額に対する価値観は人それぞれですし、かなえたい生活水準も人によって異なります。500万円を少ないと思う人もいれば、多いと思う人もいるはずです。大切なのは、家計全体の収入が500万円であることと、夫婦が考える生活や家族設計のビジョンが合致しているかどうかだと思います。
家事育児が夫婦2人の役割であるのと同様に、家計収入についても夫婦が共に当事者として考え、目線を合わせることが必要です。もし投稿者さんが、世帯収入500万円では少ないと感じているのであれば、足りない分の稼ぎを夫にだけ求めるのではなく、自身が稼ぐことも含めて話し合うべきです。もちろん、その際は家事育児にどのように対応するかも夫婦で話し合う必要があります。夫婦2人の役割を一方的な姿勢でどちらかに押し付けようとすると、必ず歪みが生まれることになります」
――非常に少数ですが、専業主婦の人たちからは「子どもと接していたいという気持ちはわかる」「一人っ子なら大丈夫」という応援エールも寄せられました。 川上さん「専業主婦としてうまく生活していく方法をアドバイスする声やエールがあることは当然だと思います」
――川上さんなら、ズバリ、投稿者にどうアドバイスをしますか。働いたほうがいいでしょうか。それともやり繰りを頑張って、専業主婦を続けるべきでしょうか。その選択の際、何を一番大切にしなくてはならないでしょうか。
川上さん「働くかどうかよりも前に、夫との目線合わせが先だと思います。一方的に自分の言い分を主張するだけでは、そのまま専業主婦を続けようが、共働きしようが、どちらの道を選んでも上手くいかないのではないでしょうか。必ず夫婦のうちどちらか一方が不満を溜めることになるからです」
――つまり、働くかどうかより、もっと大事なことを考えなさいというわけですか。
川上さん「そのとおりです。投稿者さんは、友人夫婦のお宅に遊びに行ったことをきっかけに夫の気持ちが変わってしまったとおっしゃっていますが、もともと夫の中にあった気持ちを抑えていただけで、友人宅への訪問は単なるトリガーだった可能性もあります。投稿者さんは、どうすれば夫に専業主婦でもいいと納得してもらえるか、と質問していますが、ご自身が専業主婦を続けることを前提にしている時点で間違っていると思います。
大切なのは、家庭の共同経営者として、自らも家計収入を支える当事者の一人であることを踏まえ、互いの立場や考え方、価値観を尊重しあいながら夫婦の目線を合わせることです。夫婦が互いに納得するのであれば、年収500万円でも協力し合いながら暮らしていくことは十分可能だと思います。専業主婦を続けるかどうかは、夫婦の目線を合わせる中で決められるべきことであり、話し合う前から自身の中で一方的に決めるものではありません。投稿者さんが夫の立場を考えないのであれば、家事育児に取り組む投稿者さんの立場を夫が考えなかったとしても、責めることはできないと思います。
そして、働くことの意味についても、単に家計収入を増やすこと以上の価値があることに目を向けていただきたいと思います。職を得て経済的に自立できるようになることは、人生の選択肢を増やすことにつながります。また、人生100年といわれる時代では、やりがいのある仕事に出会えることは、生涯にわたっての生きがいを得ることにつながります。
過去のトラウマから、なかなか一歩を踏みだしにくい気持ちもあるのかもしれません。あくまで無理のない範囲を前提にしつつ、未来に開かれるご自身の可能性も含めて、仕事との向き合い方を考えてみることをお勧めしたいと思います。夫としっかりと目線合わせしたうえで、投稿者さんが仕事との新たな向き合い方を模索し、一歩を踏み出そうとしたならば、夫は最も近くにいる最も頼もしい味方として応援してくれるはずです」
(福田和郎)