若手を抜擢する米国、「平等主義」で横並びの日本
日本の企業には、横並びの「水平思考」があり、米国企業のように能力のある若手を早く昇進させるダイナミズム(活力)に欠ける。誰にでも昇進の可能性があるという「平等主義」の期待を抱かせるために、あえて昇進時期を遅らせるメカニズムが働くのだ=図表4参照。
その背景には、経験者ほど優遇する日本社会の悪しき文化があると、報告書は指摘する=図表5参照。本来、管理職は職場のリーダーだ。誰が管理職になるかは、その下で働く部下たちのとって重要な問題だ。しかし、実際は「長年職場で下積みの苦労をしてきた」といった「経験」が優遇され、多くは上長や会社の重鎮たちが密室人事で決めてしまう。報告書では、誰が管理職にふさわしいか、誰がどんなスキルを持っているのか、もっと情報を開示して職場の誰もが納得できる方法で選ぶべきだと主張する。
経験者を優遇し、能力ある若手を抜擢して活躍の場を与えない日本文化は、政治の政界でも顕著だという。米国では大統領になるまでの政治家の経験年数の平均は11.5年だ。中にはトランプ氏のように0年、ジョージ・ブッシュ氏(父)のように4年、ジョージ・ブッシュ氏(息子)のように5.9年という例もある。英国でも首相になるまでの平均は16.6年だ。日本では首相になるまでに平均23.6年もかかるのだ=図表6参照。
こうした日本社会の弊害によって、日本企業の管理職は多くの課題を抱えている。
・AI(人口知能) が社会に浸透していくと、管理職はこれまでの形式的・定型的な管理業務がなくなり、ミドルマネージャー(中間経営者)として機敏な意思決定をすることが仕事となっていくのに、それができるのか。
・意思決定のスピード感が求められている中で、管理職の階層が多く、それぞれの責任範囲も不明瞭だ。欧米の企業のように、管理職のジョブディスクリプション(編集部注:ポストに就くときに渡される職務内容を明確に記述した書類)がない企業が多く、意思決定が遅くなっている。
・物事の意思決定が企業内の密室で行われ、経験者優遇傾向となっているため、経験者でポジションが埋まり、若者が経験を積むことができない。
・管理職の多様性がない。女性が少ないうえ、若者の登用率はむしろ低下している。遅い昇進が若者の成長を阻んでいる。