日本が中規模国家構想に向けて動き出す
「なんとなくあまり熱心にやらない方がいいみたい」という「空気」が醸成され、そうなったと見ている。典型的な日本的破局のありようだと指摘している。
最後に内田さんは日本のいろいろダメなところも指摘したが、日本の今後についてはそれほど悲観していないと語っている。日本の政治文化の未成熟さが行きつくところまで行き、潮目が変わったというのだ。
そして姜さんもまた、あまり悲観的ではないという。
「ポストコロナ時代がいつになるかはわかりませんが、コロナ禍を通じて、日本がやっと中規模国家構想に向けて動き出す始まりとなるのではないかと思います。そして、そこにこそ日本の新しい出発点があるはずです」
と結んでいる。
日本の実力に合った中規模国家への「縮み方」という発想は、いまだに日本が世界の大国であると考えている人には耐えがたいかもしれない。しかし、今や一人当たりGDPは世界33位となり、さまざまな指標で日本が中位国であることは明白である。
今回のオリンピックの金メダルの数に満足し、日本が大国であるかのような幻想に浸っている暇はない。大英帝国が「帝国の縮減」を計画的に行った、という内田さんの指摘にうなずいた。(渡辺淳悦)
「新世界秩序と日本の未来」
内田樹・姜尚中著
集英社
946円(税込)