外部から役員の仕事と責任の「見える化」を果たそう
報告書では、日本企業の取締役会の問題点も指摘している。まず、女性や外国人が少なく多様性に乏しいばかりか、それぞれの職務に必要な高度な専門職が養成されていないというのだ。
(1)女性役員が少ない点では、2016年にアジア・北米・欧州の企業との女性役員の比率を調べたデータがある。日本はわずか2%と、北米(22%)、欧州(17%)はもちろん、アジア諸国(17%)にも大きく差を開けられた=図表5参照。
外国人役員の比率も非常に低い。フランス(35.0%)、英国(33.5%)、ドイツ(25.3%)、米国(8.2%)に対し、日本(Topix100)では5.0%しかいない=図表6参照。
(2)なかでも報告書が特に問題視するのは、日本の取締役会と経営陣の専門化の遅れだ。まず、「CxO」(Chief x Officer)制度を導入している企業が非常に少ない。「CxO」とは、「Chief=組織の責任者」+「x=業務・機能」+「Officer=執行役」からなる経営用語で、企業活動における業務や機能の責任者を指す。CEO(最高経営責任者・Chief Executive Officer)、CFO(Chief Financial Officer・最高財務責任者)、COO(Chief Operating Officer・最高執行責任者)などがある。
東証1部の上場企業で導入しているのは20.0%だけ、一方、英国では全上場企業の61.7%が導入している(2019年データ)。「CxO」制度のメリットは、それぞれの役員の専門性と責任がはっきりしていることだ。
欧米では、役員の名前と一緒に「CxO」の情報も開示されているため、誰がその分野の責任者かすぐわかる。
「日本も外部から役員の仕事と責任の『見える化』を果たすために、『CxO』制度の普及を図るべきだ」
と報告書は提言。
その一方で、
「専門分野の人間、たとえば弁護士の取締役がいないので、問題が起こった時に改めて弁護士を役員会に呼んで会議を開くことも珍しくない」
と批判する。