日本=「サラリーマン社長」、欧米=「プロ経営者」
(2)しかも、日本では大企業トップの多くが、過去に経営者としての経験を持たずにいきなり経営者となるのが現状だ。東証一部上場企業のトップたちに、これまで自社はもちろん、子会社・関連企業・他社などで磨いた「スキル」を尋ねた調査(2014年~2019年データ)では、「事業」「経営企画」「営業」などの経験は50%~70%と高率だった。しかし、「経営」の経験があると答えた者はいずれの年でも40%に満たなかった=図表2参照。
上場企業の6割以上が、「経営者としての実績・手腕・評価」がわからないまま、「生え抜き」であることを理由にトップを選んでいるわけだ。欧米では、複数の企業で経営者になるための経験を積んだ中途採用者が、まず執行役員クラスで参画し、社内を数年かけて掌握したうえで、企業トップに昇格するケースが多い。こうした人材を、日本の「サラリーマン社長」に対して、「プロ経営者」(Professional owner)と呼ぶ。
報告書では、
「他社経験もあるプロ経営者の市場を育成・確保しながら、生え抜きにこだわらず、外国人を含めて他社経験のある経営者の割合(=18%:2018年)を10年で50%に増やすべきだ」
と提言している。
(3)日本企業のトップは、「オトコ」「高齢者(ジイサン)」「ニッポン人」の3拍子がそろっているのが特徴だ。逆にいうと、「多様性がまったくなく、女性、若者、外国人をもっと登用して活用しないとグローバル社会には通用しない」と報告書は強調する。
多様性を、日本の東証一部上場企業トップと、英国の全上場企業トップを比較した調査(2019年データ)では、日本は女性比率で3.7%下回り、平均年齢で7.6歳高く、自国籍の比率では英国の74%に対して99%と、「ニッポン人」一色に染まるありさまだった=図表3参照。
新任CEOの国籍や、海外で働いた国際経験の豊かさの調査(2018年データ)でも、日本企業トップに外国籍は0%、国際経験も21%と、米国・カナダ(外国籍14%・国際経験33%)、西欧諸国(外国籍44%・国際経験63%)に遠く及ばなかった=図表4参照。