料理宅配サービス大手、出前館の株価が2021年8月20日、一時、前日の終値から200円(13.6%)安の1276円まで急落した。
前日19日に株主優待制度を廃止すると発表しており、株主優待が目当てで株を取得していた個人投資家らの売りが殺到した。週が明けて買い戻され、24日の株価は、前日比62円高の1476円と、急落前まで戻した。
生き残りのため「削れるところは削ろう」と......
コロナ禍で巣ごもり需要が高まるなか、ネットで加盟飲食店のメニューから注文を受けて配達するサービスは、手軽に外食気分を味わえる。出前館はウーバーイーツと2大勢力を形成し成長してきた。
株主優待券はその注文に使えるもので「当社のサービスを実体験していただき、事業に理解を深めていただく」(出前館)のが狙いだった。
しかし、「順調に注文件数を増やせている」ので、配達員の囲い込みといった投資に集中するため廃止を決めた、としている。それが個人投資家の失望を呼んでしまった格好だ。
まずは出前館の足元の業績(決算期末は8月)を確認しておこう。6月25日発表の2020年9月~2021年5月の連結決算(第3四半期終了)によると、売上高は前年同期比2.7倍の184億円、営業損益は129億円の赤字(前年同期は16億円の赤字)、最終損益は147億円の赤字(前年同期は18億円の赤字)。売上高が急激に伸びている一方で、売上高の金額に迫る巨額の赤字を計上している。
同日に下方修正した2021年8月期の最終損益予想は215億円の赤字を見込む。ただ、投資は着実に進んでおり、21年5月末時点で加盟店舗数は、前年同期の約3倍の7.4万店、配達員数は同じく約7倍に達した。
第3四半期(2021年3~5月)において、新たに山形、岐阜、秋田、鳥取、島根各県でサービスを開始し、計44都道府県に広がり、全国約半分の世帯にサービスを提供できるようになった。
成長途上にある企業が、「成長痛」であるかのように設備投資など先行投資が嵩んで赤字になるのは珍しくない。とはいえ、生き残りのため「削れるところは削ろう」という判断が株主優待券廃止に至ったとみられる。