豪ドルに潜むダウンサイドリスク
ワクチン接種でかつてと同じような生活が戻り、レストランでの食事のみならず、海外旅行にも行けるようになる......。各金融機関のエコノミストは、その前提で経済成長の見通しを出していましたが、サプライチェーンへの影響を考慮し、米ゴールドマン・サックスは今年(2021年)の米国の経済成長を7%から6%に下方修正しました。おそらく、他のエコノミストも追従するでしょう。
そうなると、これからFRB(米連邦準備制度理事会)は超金融緩和策をやめて、テーパリング(量的緩和の段階的縮小)を始めることになるのですが(先日の米連邦公開市場委員会〈FOMC〉議事録から、今年12月と市場では想定されています)、想定以上に経済成長が下押しされた場合、その前提も崩れかねないことになります。
ニュージーランドの利上げ路線は、目先頓挫しました。米国のテーパリングも同じ運命をたどる可能性があります。金融市場のさまざまな前提が修正を迫られると、果たしてドルは現状レベルで良いのか、オーストラリア(豪)ドルはもっと売られないといけないのではないかとか、さまざまな修正を強いられることになりそうです。
金融市場はデルタ株の出現で大きく前提が変わりました。古い常識に囚われず、環境の変化に素早く対応できるようにしたいものです。
具体的には、豪ドル/米ドルや豪ドル/円はまだダウンサイドリスクがあるでしょう。注意したいところです。(志摩力男)