「補助金をもらってもナースをどんどんやめていく」
一方で医療従事者からは、こんな反対意見も寄せられた。
「コロナ対応している医療従事者です。現在、うちの病院では重症ベッドが満床、中等症に空きがあります。しかし、中等症といっても酸素5リットル以上の人は受け入れできません。重症化する可能性が高く、重症化した時にICU(集中治療室)に移せないからです。一方で、重症者で死亡が出た場合、あるいは抜管(編集部注:呼吸器離脱の最終ステップ)できる人がいれば、その人を中等症に移せますので、重症者のベッドが空きます。そうなれば、酸素需要の高い中等症、あるいは新たな重症者の受け入れができます。悪化する時は早いので、病床の利用状況は数時間でめまぐるしく変わります。何が言いたいかというと、病床利用率100%での運用は不可能で、バッファー(ゆとり)として若干の空きがないとダメだということです」
「コロナは通常の疾患よりも一つの病床に対する人手がいります。ナースは最低でも約3倍。このナースの数で病床を調整することになります。だいたい5床コロナ病床を作るのに50床つぶします。これはゾーニング(編集部注:汚染区域と清潔区域の区分け)の意味も兼ねます。一方、今まで50人分の診療報酬だったのが5人分になります。コロナは多少手当てが多いといっても10倍ではありません。病床設立の補助金1950万円も初回だけなので、陰圧室(編集部注:ウィルスが外部に流出しないように気圧を低くした病室)を整備してそれで終わりです。給与の割には仕事がきつくなり、ナースがどんどん辞めます。補助金をもらってコロナ病床を作ったのに受け入れられなくなります。こういう仕組みです」
(福田和郎)