新型コロナウイルスに感染しながら自宅療養を迫られている人が全国に10万人近くいるなか、補助金だけ受け取ってコロナ患者の入院を拒否する医療機関がかなりあるという。
ひっ迫しているコロナ患者の病床を確保するため、厚生労働省は2021年8月20日、そうした「トンデモ病院」の実態にメスを入れるべく、補助金の使われ方の調査に乗り出した。
新型コロナウイルスと戦う多くの医療従事者の陰で、そんな「悪徳医師」が本当にいるのだろうか――。
「受け入れ拒否」というより「受け入れたくてもできない」
日刊ゲンダイ(8月21日付)は「補助金を受けながらコロナ患者受け入れ拒否の病院が...」の取材で、「補助金目当てではないか」と地域住民から思われている病院を直撃。「受け入れ拒否が起きている」と切実な状況を訴えた関東圏の民間病院長が、こう明かしている。
「この地域の基幹病院は、複数の市町村が共同で設置、運営している公設病院で、周辺に私たちのような小さな民間病院が点在しています。どの民間病院もコロナ病床は3~5床がせいぜい。そのため公設病院にコロナ患者の受け入れをお願いするのですが、理由がよくわからないまま断られるケースが相次いでいるのです。すでにこの地域の保健所管内で100人近い自宅待機者が出ているにもかかわらずですよ。それでいて、コロナ関連の補助金を受け取っているなんて話を聞くから怒りたくなりますよ」
日刊ゲンダイ記者は、その公設病院を取材した。
「――そちらの入院ベッド数は200床ほど。コロナ病床はあるのですか。
『コロナ病床は現在10床ほどあります』
――満床なのですか。
『いいえ。空きはあります』
――そちらの病院がコロナ患者の受け入れを拒否していると、住民から不満の声が出ています。なぜ、空きがあるのに受け入れないのですか。
『軽症者は受け入れています』
――入院待機者が増え続ける中で、軽症者以外の患者は受け入れない理由は何でしょうか
『こちらは呼吸器系の専門医も少なく、看護師の数も足りない。これでは受け入れたくてもできないというのが実態です。ただ、県からは今の緊急事態を踏まえ、受け入れ要請がきており、病院内でも検討している最中です』」
そして、日刊ゲンダイはこう嘆いている。
「どうやら、この地域では『受け入れ拒否』というよりも、『受け入れたくてもできない』ということらしい。確かに容体が急変しかねないコロナ患者を受け入れるためには設備もマンパワーも不可欠だろう。とはいえ、このままでは自宅で亡くなるコロナ患者が増える一方だ。どうしてこんなことになるのか......。」
プレジデントオンラインの高久玲音・一橋大学准教授のリポートといい、日刊ゲンダイの記事といい、「補助金泥棒」といった絵に描いたような「悪徳病院」が横行しているというより、日本の医療システムや政策に大きな欠陥があるようだ。