日本はロックダウンできない社会
もう一つはロックダウンの前提は法的権限や警察取締力ではなく、ロックダウンができる社会であるかどうかという視点である。
ヨーロッパ諸国で可能なのは、雇用(失業)保険給付、住宅保障、老齢年金・子供手当などの所得保障、年間労働時間の短さなど、ステイ・ホームしても民衆社会が成り立つ社会生活インフラを、日本に比べて相対的に整備してきたことによる、と説明している。
日本が実行できないのは、法的権限がないからではなく、社会生活インフラがないからだというのだ。日本は国民経済と国民生活が切り離せない「就労第一社会」であり、ロックダウンできない。
第一次緊急事態宣言下での「投網」型鎮静は、いわゆるロックダウンではないにもかかわらず、経済=生活に大打撃を与えてしまったのは、そのせいだという。社会の構造から変えなければならないのか、と思うと気が遠くなる思いがした。(渡辺淳悦)
「コロナ対策禍の国と自治体」
金井利之著
筑摩書房
1034円(税込)