コロナ対策がかえって問題を引き起こしている逆説【新型コロナウイルスを知る一冊】

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「前のめり」になった為政者たち

   金井さんは、このあたりから権力集中を体現した災害行政の仕組みを新型コロナウイルスにも発動する政権の意志が表れた、と見ている。そして安倍政権は「前のめり」になっていく。その第1弾が全国一斉休校の要請だった。さらに「アベノマスク」配布。「官邸官僚の思いつき提案として、権力集中の意思決定構造自体に不信が向けられた」。

   また、自治体のトップも以下のような行動をしたと分析している。一部を抜粋する。

演技系 「訴求」。目立つために「都市封鎖」「ロックダウン」などの表現を用いる。
我我系 「吝嗇」。自粛要請や緊急事態宣言などと口出しはするが、休業補償・雇用賃金保障などには消極的である。
愚昧系 「自縄自縛」。オリンピックを招致したので、IOCが延期を決めるまでは、広範な検査によって感染拡大を認めることもできない。また、招致した以上は、返上することもできない。

   さらに、「浅知恵」「拙速」「二十基準」「矛盾」「差別」など、19の特徴を挙げている。金井さんは、自治体がこうした事態に陥ったのは、地方分権と言われながら、小泉政権・第二次安倍政権などで、官邸主導による国政での権力集中が進んだからだ、と分析する。

「追従と忖度の自治は、国政政権が恐慌を起こして、方針や方向性を消失したときには、無規律の暴走を始める。なぜならば、追従・忖度すべき対象が消失するからである」

   感染症対策は、感染源となる人間を早期に発見して、他の非保有集団から排除する対策になりがちである。そのさまざまな諸相を図式を使って説明する様がわかりやすい。たとえば、一律に自粛要請する「投網」型の鎮静は、形式的には公平に見えるが、実質的には標準階層、自由階層、医療階層、従事階層、不安定階層と5つの階層をつくり、不公平と分断を生み出した、としている。

   また、特定の分野に限定した「折衷」型の鎮静も行われた。特に、3密になりやすい施設の運営自粛が進められた。地域限定型の鎮静も行われた。排除と鎮静と流行のなかで、コロナ対策は右往左往していく。

   金井さんは、非難応酬の構造を分析し、国や自治体の弁明の方策なども検討している。本書の発行は、2021年5月であり、その後の東京オリンピックの開催と第5次とされる現下の爆発的な感染前である。しかし、おおよそのことは本書が言及している通りである。

   最後に二つ、本書から受けた重要な論点を挙げたい。一つは、学校が児童ケア施設であるという視点だ。感染拡大により、夏休みを延長する動きが一部の自治体で出ている。保護者の負担は増えるが、どういう議論が行われるだろうか。

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