フリーマーケット(フリマ)アプリ大手のメルカリが、初めて黒字決算になった。
新型コロナウイルス感染拡大による「巣ごもり需要」で中高年を中心に利用者が広がり、手数料が増えた。
高齢者がバブル期の高額品を放出
主力の国内フリマ事業は中高年層の参加が広がり、利用者数が1954万人と、1年前から約200万人増え、流通総額は7845億円と前期比25%伸びた。特に中高年の利用者が増えた。
仕事がひと段落、あるいはリタイアして時間に余裕がある60代以上の利用者は、フリマ出品数が月平均6個と、20代の2倍になるといい、中高年の利用者が、長年退蔵してきたバブル期の高額な品を放出して取引金額が上がったことも利益を押し上げたようだ。
特に中高年層の獲得に向け、初めてフリマアプリを使う人向けに出品方法などを教えるの「メルカリ教室」を全国およそ700ヵ所で開くといった営業努力も実を結んだ。
先行投資がかさみ、赤字の要因となっていた米国のフリマ事業も、収益が改善した。プロフットボールNFLの王者決定戦「スーパーボウル」へのCM出稿により、認知度を上げるなどの効果もあって、流通総額が11.7億ドルと、同72%増えた。
手数料の上乗せなど収益改善にも取り組み、調整後営業損益は3900万ドル(約43億円)の赤字で、前期の1億400万ドルの赤字から大きく改善した。
ただ、主力のフリマ事業には頭打ち感も漂う。国内の流通総額の伸びは21年4~6月期は前年同期比15%増に鈍化している。22年6月期は、国内で一人当たり購入金額のアップに注力する方針を掲げるのも、ユーザー数の増加には限界があることの裏返しだ。前期、大幅に伸びた米フリマ事業も、ウーバーと連携した即日配送サービスによる利用者拡大をめざすとするが、22年6月期の流通総額の目標は20%増と控えめだ。
山田社長、海外に意欲 「次のグローバル展開を推し進める」
今後の成長に向けて考えられるのが、一段の海外展開と新規事業だ。
山田進太郎社長は決算発表の席上、「次のグローバル展開を推し進める」と、米国に続く海外事業の強化に意欲を見せた。具体的な地域については、「まったくの未定」としつつ、「CtoC(消費者間)のオークションの市場規模がある地域を考えると、欧州全体は一つの選択肢。米国と同じぐらいの大きなマーケットがある。また、アジア、インドなどの新興国もあり、フラットに可能性を考えていく」と述べており、欧州が当面の焦点になりそうだ。
新たな事業では、CtoCからBtoC(事業者・消費者間)への展開が注目される。21年1月に新会社を設立し、9月から「メルカリShops」をスタートさせる。事業者がスマホから簡単にEC(電子商取引)サイトを開設できるのが売りで、メルカリの2000万人の顧客に商品を販売できる。この事業がどのように広がっていくは大きな注目点だ。
このほか、スマホ決済の「メルペイ」は21年6月期の利用者数が前期比322万人増の1067万人となり、21年5月には単月黒字化を果たした。8月からメルカリの利用実績などをもとに、金利や限度額が決まる少額融資サービスを始めたが、こうした「与信」を軸に、フリマとも連動させた収益の積み上げを図る。暗号資産(仮想通貨)の「ビットコイン」などを活用した金融サービスも推進する考えだ。
ただ、新しい分野、新しい地域展開は見通しを立てにくいところ。本業の日米を中心としたフリマ事業の収益に陰りが見えるなか、新たな成長軌道をどう描いていくか。単年度黒字化は、出発点に過ぎない。(ジャーナリスト 済田経夫)