2021年8月最初の週末、スポーツ好きは東京オリンピックを見るためにテレビに釘付けになり、日本のアニメや文化のファンはドイツのデュッセルドルフに集いました。
町中に溢れたコスプレーヤーやオタクのお目当てのイベントは、ドイツのコミケこと「DoKomi(ドコミ)」です。 コロナ禍以前は5万人を超える人で賑わっていたドコミですが、昨年に引き続き今年も規模を大幅に縮小し、徹底した感染対策の下での開催となりました。
ドイツのジャパンフェスには欧州中から「日本ファン」が集う
日本文化をテーマにした「ジャパンフェス」が、今や世界中で開催されていることは、みなさんもご存知だと思います。
その中でもドイツは、ヨーロッパ随一の熱狂を生む国。通常ならば、日本関連イベントは大規模なものだけでも年間で20以上が開催され、日本の伝統文化、ポップカルチャー、アニメや漫画ファンを世界中から集めています。
海を越えた日本文化は、日本育ちの筆者から見ると、少し不思議なものや形を変えながら受け入れられているものもありますが、世界の人を魅了し続ける「JAPAN」の魅力を再発見する機会にもなります。
コロナ禍においても、開催が切望されるジャパンフェスが、どのような工夫をしながら開催されているのか、各分野で欧州最大級と言われている3つのイベントをご紹介しましょう。
(1)日本文化イベント「日本デー Japan-Tag D?sseldorf / NRW」
来場者60万人とも70万人とも言われている「日本デー」は、デュッセルドルフの初夏の風物詩。ライン川沿いの遊歩道約1キロメートルに、ずらりと特設テントやステージが並んで、日本文化を楽しみ、味わえる市民交流型のイベントです。
昨年は開催が見送られましたが、日独交流160周年を記念する今年「日本デイズ Japan-Tage D?sseldorf / NRW 2021」となって帰ってきました。オンライン・イベントと開催時期と会場を分散したリアルなイベントが春から秋まで行われます。
(2)日本映画祭「ニッポン・コネクション Nippon Connection」
日本映画を愛するドイツの有志がフランクフルトに集い、ボランティアの運営をベースに開催される日本映画専門の映画祭。今や日本国外で最も重要な日本映画のイベントに成長しています。
昨年はオンラインで開催され、会期中に40か国2万5000人超の観客を動員する成功を収めました。今年は第一部オンライン上映(6月1日?6日)、第二部劇場上映(8月3日?21日)の2部構成で、日本映画を世界に向けて発信。今年のニッポン・シネマ賞は、クィア映画『his』(今泉力哉監督、2020年)に授与されました。
(3)ドイツのコミケ「ドコミ Dokomi」
ドイツ最大級の日本のポップカルチャーのファンのイベントである「Dokomi(ドコミ)」は、例年ならば5万人超の観客を動員しています。コミケ形式のブースだけでなく、日本から招へいされたクリエイターやミュージシャンのパフォーマンスも楽しめるとあって、参加者の気合も十分。欧州のコスプレーヤーたちの聖地の一つとなっています。
昨年同様、1日あたりの来場者数を1万4000人に制限し、会場の広さは通常の倍である10万8000平方メートルに拡張するなど厳格な感染予防に徹したドコミ、今年は日本デイズのイベントの一つに加わりました。
イベント会場で必須の3G ドコミの会場ではワクチン接種も
一時は底を打ったかに見えたドイツの新型コロナウイルスの新規感染者数は、再び上昇傾向にあり、ワクチンの接種が完了している人の割合は55.6%と伸び悩んでいます。
そのため、ドイツで開催される大規模イベントでは感染予防のための3Gが徹底されています。「ワクチン接種者(geimpfte)」「感染からの快復者(genesene)」「コロナ検査実施者(getestete)」の頭文字「G」を取って3Gです。会場では、いずれかの状態であることを証明する証明書の提示が必要です。
さらに、ドコミの会場内では移動式のワクチン接種ブースも設置されました。希望者は予約なしで、希望するワクチンを摂取でき、選べるのは欧州医薬品庁(EMA)で承認されたジョンソン・エンド・ジョンソン、アストラゼネカ、モデナ、バイオテック/ファイザーの4社のワクチンです。
デュッセルドルフ市のコロナ対策を率いるブルクハルト・ヒンチェ危機管理部長は、
「新規感染者の7割が10代から40代に集中している今、このイベントはまだワクチン摂取をしていない若い参加者に向けたキャンペーンです」
と、訴えていました。
ドコミのワクチン会場を視察するデュッセルドルフ市ブルクハルト・ヒンチェ危機管理部長と、ドコミ参加者ケリー・ジンデマンさん、内科医のグニラ・エアドマンさん。(c)Landeshaupstadt Dusseldorf/Michael Gstettenbauer
新型コロナウイルスとの戦いの1年目だった昨年は、日本関連イベントも中止やオンラインのみでのイベントを強いられてきましたが、今年は感染予防対策を徹底しながら、少しずつ日本ファンが会場に戻ってきました。
ただ、毎年の日本デーのハイライトで、デュッセルドルフの市民が心待ちにしている日本の花火師による花火の打ち上げは今年も残念ながら中止。来年こそは、夜空に浮かぶ大輪の花をみんなで見上げられますように。(高橋萌)