就業人口の減少や共働き世帯の増加などで、企業にとって女性活躍が必要不可欠となるなか、2021年の女性管理職の割合は平均で8.9%だったことが企業信用調査の帝国データバンクの調べでわかった。依然として低水準ながらも、過去最高を更新。また、前年比1.1ポイント増の増加幅も過去最大だった。8月16日、「女性登用に対する企業の意識調査(2021年)」を発表した。
政府目標である「女性管理職30%以上」を超えている企業は8.6%(前年比1.1ポイント増)。女性従業員の割合は平均26.5%(同0.7ポイント増)、女性役員の割合は平均11.8%(同1.0ポイント増)だった。
政府は、「指導的地位に占める女性の割合を30%程度」に上昇させる目標が、当初の2020年に未達成だったことから、「2030年までの可能な限り早期」へ修正。女性活躍社会を実現する道筋は、なお厳しい。
女性管理職、約6割が今後も「変わらない」
調査によると、「今後、女性管理職の割合が増える」と見込んでいる企業は22.6%で、前年より0.9ポイント増えた。大企業では33.9%となったが、中小企業は19.1%、小規模企業は11.4%にとどまった。今後も「変わらない」とみている企業は58.9%と、6割近くにのぼる。
女性活躍を進めている企業は46.9%。大きく落ち込んだ2020年の42.6%から4.3ポイント増加している。その内訳をみると、「社内人材の登用を進めている」企業が40.7%(前年比3.0ポイント増)、「社外からの登用を進めている」企業が11.5%(同1.3ポイント増)だった。一方で、約4割の企業では女性登用を「進めていない」結果となった。
帝国データバンクでは、女性管理職(課長相当職以上)の平均割合は前年からの増加幅とともに過去最高を更新。政府目標である「女性管理職 30%」を超えている企業の割合も増加して、女性役員や従業員も同様の傾向となるなど、低水準ながらも上向いてきている。
しかし、女性活躍を進めていない企業は約4割、女性管理職割合が今後も変わらないとする企業は約6割にのぼる。特に建設業、運輸・倉庫業からは、取り組みに前向きな意見もみられる一方で、採用面などで難しさを感じているという声が少なくなかった。
男性の育児休業「積極的な取得」は9.5%
また、家事負担の軽減などによる女性活躍の推進を主な目的に、2021年6月に男性の育児休業促進策を盛り込んだ育児・介護休業法が改正された。これを受けて、自社における男性の育児休業取得に関する推進状況を聞いたところ、「積極的に取得を推進している」企業は9.5%だった。「今後推進する」は41.1%となり、合わせて約半数の企業が男性の育休取得に対して前向きに考えていた。「特に何もしない」と回答した企業は 39.5%だった。
企業の規模別にみると、「積極的に推進している」に加えて、特に「今後推進する」において大きく差が表れている。大企業では 51.4%にのぼる一方で、中小企業では 39.0%、小規模企業では 28.8%にとどまっている。
中小企業からは、
「規模の小さい企業では育休などによる不足人員を埋めるのは、金銭的に厳しい」(一般機械器具卸売、福岡県)
「育休の影響によって派遣社員の雇用など期間限定の補充も視野に入れているが、復職後の時短勤務も会社および社員にとって負担が大きい」(飲食料品・飼料製造、静岡県)
などの人員面に対する課題をあげる意見が多くみられた。
企業規模による差は大きく、中小企業や小規模企業では男性の育休取得推進に積極的ではない様子が色濃く表れている。「育休により生じる人員不足への対応が難しいとの課題が浮き彫りとなった」と、帝国データバンクはみている。
なお調査は7月15日~31日に、全国2万4285社を対象に実施。有効回答企業数は1万992社(回答率45.3%)。女性登用に関する調査は2013年以降、毎年7月に実施し、今回で9回目。この調査はTDB 景気動向調査(2021年7月)とともに行なった。