「最後のフロンティア」のはずが......
2011年に民政移管したミャンマーは「最後のフロンティア」とも呼ばれ、日本勢をはじめとする外資がこの10年間で次々と進出した。キリンHDがシンガポール企業からミャンマー・ブルワリーの株式を取得したのも2015年だった。特に日系企業が積極的だった背景には、周辺国との関係を深める中国を念頭に置き、ミャンマー進出を後押ししていた日本政府の意向があったとの見方もある。
このうち、日系の自動車メーカーでは、シェア首位のスズキは現地工場の増設部分を2021年9月に稼働する予定で、トヨタ自動車も現地に新設した工場を2月から稼働する計画だったが、いずれもクーデターの余波で滞っている。
また、ゼネコン大手の鹿島建設も最大都市のヤンゴンで再開発事業を進めていたが、中断を余儀なくされた。軍政が長く続いたミャンマーでは、現地の有力企業のほとんどが国軍と何らかの関係があるとされる。
こうした特有の事情が今回のクーデターで、進出企業には裏目に出た。国軍が統治体制を固めていく中で、現地で事業を展開する日本企業は対応を問われている。(ジャーナリスト 白井俊郎)