感染管理、在庫の消化進まず
こうした事態を招いたのは、感染管理商品の想定外の販売不振だった。大幸薬品は代名詞とも言うべき「正露丸」、その他大衆薬品については訪日外国人が「蒸発」した影響で販売が落ち込んだが、クレベリンやその関連製品の売り上げの伸びでカバーしていた。
特にコロナ禍初期は欠品が常態化したこともあり、大阪府茨木市に新工場を設けて増産。生産能力を最大10倍に増やすことも計画していた。
しかし、「コロナ流行の長期化による不安度の鈍化やワクチン接種効果への期待」(大幸薬品)などから他社商品を含めて市場在庫の消化が進まず、特に下半期(7~12月)には販売計画が予想を大幅に下回る見通しになった。 在庫調整のため茨木の新工場を含めて感染管理事業は生産停止しており、通期で11億円の操業停止関連費用も計上。在庫の評価損は17億円にのぼる。
大幸薬品はコロナ禍で売り上げを伸ばす企業として株価が上昇し、2020年8月に2928年の高値をつけたが、これをピークに下落を続け、今やコロナ前の2019年後半の水準に戻った。赤字を乗りこえて経営をどう立て直すか、世に広く知られる「正露丸」を擁する老舗企業の次の一手に注目が集まる。
(ジャーナリスト 済田経夫)