日本の製薬会社の凄い新薬
「週刊エコノミスト」(2021年8月24日号)の特集は「上がる医薬株」。バイオで注目される日米企業を取り上げている。
冒頭で紹介しているのは、兵庫県芦屋市に本社を置く従業員約800人の中堅製薬、JCRファーマから発売された新薬「イズカーゴ」だ。世界初の「Jブレイン・カーゴ技術」を用いたハンター病用の薬。この技術は、脳内への物質輸送を制限している血液脳関門を通過させて脳内に薬を届けるという。
特定の酵素が生まれつき欠損しているか低下していることで、老廃物の分解・代謝が正常に行われないハンター病の治療に新薬が役立つと見られる。
また、この技術を使えば、認知症など中枢神経への作用を求められる治療薬にも幅広く活用できる可能性があるという。
同社は英アストラゼネカ製の新型コロナワクチン原液の受託製造も手掛けている。アストラゼネカのワクチンはJCRファーマが取り組んでいる遺伝子治療技術と共通するところがあり、またワクチン原液の製造がバイオ医薬品の製造工程と酷似していることから、同社に白羽の矢が立った。
新型コロナウイルスに対する「国産ワクチン」の開発がヤマ場に差し掛かっていることを、前田雄樹氏(AnswersNews編集長)がリポートしている。国内では現在、アンジェス、塩野義製薬、第一三共、KMバイオロジクス、武田薬品工業が国産ワクチンの治験を進めている。
最も実用化に近いのが、武田薬品だという。同社が開発しているのは米ノババックスが創薬した「組み換えたんぱくワクチン」と呼ばれるタイプ。武田薬品がノババックスから製造技術の移転を受け、山口県光市の自社工場で年間2億5000万回分の生産を計画している。通常の冷蔵庫の温度で保存でき、扱いやすいそうだ。
コロナ克服にはワクチンだけでなく治療薬も欠かせない。中外製薬が申請していた「抗体カクテル療法」(製品名・ロナプリーブ)が7月19日、特例承認された。米リジェネロン・ファーマシューティカルズが開発。中外が国内で販売する。基礎疾患を持つなどリスクの高い軽症~中等症の患者に投与することで、入院や死亡のリスクを70%低下させた。国内メーカーでは、塩野義製薬が7月に経口薬の初期の治験を始めた。
海外メーカーとの規模の差が語られる製薬業界だが、日本勢の健闘を知り、少し明るい気分になった。