「オリンピックが台無しになる!」――。新型コロナウイルスの感染大爆発を引き起こしている「デルタ株」より、もっと怖いかもしれない変異ウイルス「ラムダ株」が日本に上陸していた。
東京オリンピック直前の2021年7月20日、「ラムダ株」感染のお膝元の南米ペルーから、オリンピック関係者の女性がウイルスを持ち込んでいたのだ。しかし、日本政府はそれを隠蔽した。「五輪反対」の世論に火がつくのを恐れたとされる。「ラムダ株」は、いったいどれだけ危険なのだろうか。
「感染力が強く、ワクチン効きにくい可能性も」
最強のウイルスの系統だけが弱いウイルスを駆逐して、どんどん広がっていく。このことは「ラムダ株」にも当てはまりそうだ。
「ラムダ株」とはどんなウイルスなのか。朝日新聞(8月14日付)「ラムダ株は『感染力強い』 ワクチン効きにくい可能性も」が、発生元のペルーの研究者を取材している。
「『ラムダ株』は、ペルーでは新規感染者の8割から検出されている。ラムダ株を初めて報告したペルーのカエタノ・エレディア大学の分子遺伝学者パブロ・ツカヤマ博士は『わずか3か月で急速に広まった。感染力が強いことは確実だ』と話す。ペルーでは8月10日までに19万7000人以上が新型コロナで死亡しており、死亡率は9%を超える。人口10万人あたりの死亡者数は世界で最も多い。だが、ツカヤマ氏は『ラムダ株の致死率が、他の変異株よりも高いかはわかっていない』と話す」
その背景には、統計のいい加減さもある。ラムダ株流行前の死者数が多く含まれるうえ、吸入用酸素の不足や、医療態勢のもろさが原因となった死者も多く、ラムダ株だけが、死亡率が高い原因とは言い切れないのだ。朝日新聞がこう続ける。
「ツカヤマ氏はラムダ株にはワクチンが効きにくい可能性があるとしながらも有効だとしている。同氏らの研究グループは、『ラムダ株にみられる変異が、ワクチンの効果を弱める可能性がある』と報告したが『まだ結論は出ていない』という」
わからないことが多いのだ。その原因の一つに「中国製ワクチン」がある。隣国チリではすでに国民の6割が2回のワクチン接種を終えたが、ラムダ株の感染が急速に広がった。チリでは他のワクチンに比べ有効性の低い中国メーカーの「シノバック」が主流だ。また、チリの研究グループはラムダ株がシノバックのワクチンに適応した可能性を指摘している。ワクチン効果をなくす「能力」もあるようだ。
CNNニュース(8月7日付)「What experts are learning about Lambda, a coronavirus 'variant of interest'」(専門家が『関心の変異ウイルス』ラムダについて学んでいるもの)では、多くの専門家に取材しているが、まだまだ謎の多いウイルスだとする点は共通している。北米は「デルタ株」に席巻されているが、「ラムダ株」が南米を支配しており、両者が「棲み分け」をしているため、米国の学者には研究データが不足しているためもあるようだ。
記事の中で、米国のワクチン研究の「大御所」であるグレゴリー・ポーランド博士は、こう語っている。
「我々は『ロシアンルーレット』(編集部注:回転式拳銃に1発だけ実弾を装填し、適当にシリンダーを回転させてから自分の頭に向け引き金を引くゲーム)をやっているようなものだ。変異ウイルスが人から人にジャンプするたびに、我々はますます多くの変異体に出会うだろう。最終的には、これらの変異体の1つ以上がワクチンによる免疫を回避する方法を学ぶだろう。それが本当なら、私たちは最初からやり直さなくてはならない」
「ラムダ株」がシリンダーに残る弾になるかどうかを判断するには、データ不足だというわけだ。