消えるコメ先物取引 「聖域を守れ」と農水省に「圧力」をかけた? 本上場反対派の顔ぶれ

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本上場に明確な基準なし!

   農水省は本上場の条件として、(1)十分な取引量が見込めるか(2)生産・流通を円滑にするために必要かつ適当か――を判断基準に設定。堂島商取は(1)について、売買高が前回の試験期間の2.8倍に増えたと主張。(2)は、要するに取引への参加者数の問題で、堂島商取は参加者が同じく172から175となり、うち生産者は62から66に増えたことなどを訴え、本上場の認可を求めた。

   農水省は、過去には(1)を理由に本上場を認めなかったが、今回は(2)について、生産者の参加の広がりが不十分だと指摘し、認めない理由とした。堂島商取が(2)を理由として説明されたのは今回が初めてという。いずれにせよ、(1)(2)とも、明確な数値基準があるわけではなく、農水省の裁量による不認可といえる。

   本上場が認められなかったのは、農協と自民党農林族が強硬に反対してからだ。

   堂島商取が正式手続きとして、7月に本上場を農水省に申請したが、ここから族議員が一気に動き始めたとされる。7月20日の自民党農水族の幹部が非公式に集まり、本上場に反対する方向を確認、党農林・食料戦略調査会などの議論を経て、8月4日、農水省に対して本上場は「慎重に判断」するように申し入れた。事実上の本上場反対を打ち出したものだ。

   農林族の動きの背後にいるのが農協(JA)だ。

   コメは卸売市場で自由に値が決まる野菜などと異なり、農家、農協と卸売業者の相対取引が中心。JAが流通の5割を押さえ、価格決定の主導権を握っている。JAは小規模農家にも配慮し、安定した価格形成を図る。これまでの先物の取引では現物に影響を与えるレベルにははるか及ばなかったが、将来的に先物取引が活発になり、市場メカニズムをより価格に反映するようになるのは、ただでさえ消費が長期低落傾向の中、価格低下=農家の収入減少につながるのを恐れているのだ。

   堂島商取の中塚一宏氏は、農水省とは本上場申請に向け事前にすり合わせており、手応えを感じていたという。本上場の基準に達しないとの農水省の判断に中塚氏は「恣意的だ」などと反発したが、JAの理解を得るに至らず、一敗地にまみえることになった。

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