英国では3回目のワクチン接種が無意味であると説明
一方、英アストラゼネカ社とワクチンを共同開発した英オックスフォード大学の研究グループ責任者がアンドリュー・ポラード教授だ。
ポラード教授は、
「ブースター接種は必要ない。そんな余裕があるなら、ワクチンを発展途上国に寄付すべきだ」
と主張したのだった。
なぜ、ポラード教授が米のファウチ氏と真逆のことを言ったのか。ロイター通信(8月11日付)「Oxford researcher urges Britain to donate vaccines rather than give boosters」(オックスフォード大の研究者は、ブースター接種を勧めるくらいなら、ワクチンを寄付するよう英国に要請する)が、こう報じる。
「オックスフォード大のワクチン開発責任者、ポラード教授は、デルタ株の感染拡大によって『ワクチン接種が進んでも集団免疫の獲得は不可能になった』との認識を示した。ポラード教授は下院議員たちへのコロナ対策のブリーフィングの席上で、3回目のワクチン接種が無意味であること説明したのだった」
その理由としてポラード教授は、英国ではすでに成人の75%が2回のワクチン接種を終えているのに、デルタ株の感染が爆発的に広がっている現状を指摘した。ワクチン接種を終えた人のあいだでも、デルタ株に感染する人が増えている。こうした状況では、ワクチン接種を前提とした集団免疫の獲得は「不可能だ」とポラード教授は言うのだった。つまり、デルタ株の感染拡大を防ぐのは無理である。ロイター通信は、こう続ける。
「ポラード教授は、そのうえで『死亡や入院を防ぐ方法を考えることが重要で、そちらに焦点を当てるべきだ』とした。『ブースター接種を考えるのは、接種を完了した人たちの間で入院患者や死者が増えてきた時だが、幸い、現在それは起きていない。ワクチンの2回接種で、重症者や死者が抑えられており、現時点でパニックになる必要はなく、ブースター接種はやめるべきだ』と強調した」
また、ポラード教授は、ヒトの免疫システムは何十年もワクチン接種を記憶するため、今後、免疫が弱まっても完全に消えることはないと説明。今後は、重症化する人たちへの治療の進歩に焦点を絞るべきと主張した。
そして、ポラード教授はこう語ったのだった。
「世界保健機関(WHO)はブースター接種を計画している国々に対し、ワクチン接種を受けられない国々にワクチンを回してほしいと促している。我々のワクチンは、今後6か月間に死亡するかもしれない人々、とくに子どもたちのために役立てたほうがはるかによい」