「ええっ、いつのまに150万円も!」
子どもにお爺ちゃんのスマートフォンをちょっと渡しただけなのに、超高額のオンラインゲーム課金の請求書が届いて、腰を抜かす親が増えている。
新型コロナウイルスの影響が長引き、自宅で過ごす「おうち時間」にスマホや家庭用ゲーム機でゲームを楽しむうちに、子どもが親に隠れて課金するトラブルが急増。国民生活センターが2021年8月12日、警鐘を鳴らす調査を発表した。
親のクレジットカードをこっそり使って...
国民生活センターの調査によると、オンラインゲームによる子ども(小中高校生)の課金トラブルなどの相談件数は、2016年は1171件だったが、昨年(2020年)は3723件と3倍以上に増えた=図1参照。
今年は昨年を上回るペースだ。男子が圧倒的に多く、相談内容の9割を占める。相談金額は10万円~50万円未満が44%と一番多く、50万円~100万円未満が10%、100万円以上という高額も5%いる。
たとえば、こんな事例が多い。
【事例1】小学生の子どもが、友達に「スマホのキャリア決済を使うとお金がかからない」と教えられ、高額課金していた携帯電話の利用履歴を確認していたら、高額な料金が発生していることに気がついた。小学生の子どもが、家族のスマホを使ってゲームアプリで遊んでおり、課金をした。課金については禁止していたが、一緒に遊んでいた友達から「キャリア決済を使うとお金がかからないでゲームができる」と教えてもらったという。【事例2】小学生の子どもが150万円以上も課金していたが、決済完了メールを削除していたため、気がつかなかった
アプリのプラットフォーム運営事業者と交渉して、取り消してもらえたものもあったが、まだ10万円ほどの請求が残っている。キャリア決済(編集部注:携帯電話会社のIDやパスワードによる認証で商品などを購入した代金を、携帯電話料金と合算して支払う決済方法)の際にパスワードの入力は必要ではなく、決済完了メールは届いていなかった。子ども自身はお金がかかっている認識はなかった。(2021年4月、30歳代父親)
春の大型連休中に、小学生の息子2人が、家族共有で使用しているタブレットを使ってオンラインゲームで遊び、クレジットカードで150万円以上も課金をしていたことがわかった。4月末頃から子どもたちが課金のお願いをしなくなったので不思議に思っていたが、勝手に課金をしていたのだ。【事例3】小学生の子どもが、父親のアカウントを使って家庭用ゲーム機で遊び、こっそりクレジットカードを使い課金していた
タブレットには、私がクレジットカードで決済するために、クレジットカード2枚の番号を登録していた。クレジットカード会社からの決済完了メールがタブレットに届いていたが、子どもたちが「ゴミ箱」のフォルダーに入れていたのでまったく気づかず、請求が来て驚いた。(2021年5月、40歳代父親)
パソコンにオンラインゲームの決済メールが届いていることに気がついた。小学生の息子が、家庭用ゲーム機のゲームのポイントを入手するために、クレジットカードで約7万円課金していた。ゲーム機には父親のアカウントしかなく、父親のクレジットカードを登録していた。息子は、半年前からいつも父親のアカウントを利用してゲームをしていた。 動画サイトにゲームのポイントを入手する方法が紹介されているのを見て、その通りにやってみたという。息子は、課金されているとは知らなかったようだ。ゲーム機会社に返金を申し出たが、断られた。返金してもらえないだろうか。 (2021 年2月、40歳代母親)
「子どもが課金した」と証明することが難しい
【事例4】小学生の子どもに一度だけ課金することを許し、スマホにクレジットカードを登録したところ、30万円以上も課金していた祖父(相談者の父)が使っていた古いスマホを小学生の息子に渡して、オンラインゲームをさせていた。息子が「アイテムが欲しい」と言うので、私がクレジットカード情報を登録し、一度だけ課金を認めてアイテムを購入した。
その後、クレジットカード会社から利用明細が届き、息子が1か月半で30万円以上も課金したことがわかった。息子に聞くと、ゲームアプリ内で課金をする際に年齢を選ぶ画面があり、「20歳以上」を選択したらアイテムがたくさん購入できたという。どうすればよいか。(2020年10月、40歳代母親)
こうした子どものオンラインゲームの課金トラブルで厄介なことは、なかなか返金が認められないことだ。ふつう、未成年者が親の同意を得ずに契約した場合は、民法で定められた未成年者取消権によって契約を取り消すことができる。しかし、オンラインゲームの場合、「子どもが課金した」と証明することが非常に難しいため、取り消しが認められず返金されないケースが多い。
オンラインゲームで課金するときは、原則、プラットフォームのアカウントを通じて行われる。保護者のアカウントでログインしたスマホや家庭用ゲーム機で、子どもが課金した場合は、アカウントの所有者である保護者が決済を行ったとみなされてしまうからだ=図2参照。
しかも、オンラインゲームでアイテムを購入する際には、原則、プラットフォームのアカウントのIDとパスワードが必要だが、プラットフォームによっては、パスワードを入力せずに決済できるように設定を変更できるものもある。また、スマホでキャリア決済を利用して課金する場合も、原則キャリア決済のパスワードが必要だが、同様にパスワードの入力を不要にすることも可能だ。【事例1】のように、子どもがタップするだけで簡単に課金ができるケースもみられる。
親の操作を見て、パスワードを覚えた
子どもたちの中には、
「親が操作するところを見て、パスワードを覚えて課金した」
「親のクレジットカードを持ち出して課金した」
というケースも少なくない。
また、家庭用ゲーム機では、親と子どものアカウントを別々につくり、親が子どものアカウントを管理・保護することを原則とするところが多いが、子どもがこっそり親のパスワードを知り、親のアカウントを使うトラブルが多い。
親に気づかれないように課金する方法が、ウェブサイトや動画にあふれているのだ。しかも、子どもたちには勝手に大金を使っているという罪悪感があまりない。
国民生活センターでは、
「子どもは同じゲームで一緒に遊んでいる友だちと比較して、自分も有料アイテムを手に入れたいという心理が働くことがあります。オンラインゲームで課金する場合のルールを家族で話し合いましょう。また、オンラインゲームの中には、保護者のアカウントで子どもに利用させず、子どものアカウントを管理、保護できるようにする『ペアレンタルコントロール』システムがあるところが多いので、利用しましょう」
と呼びかけている。
(福田和郎)