コストの低下が普及のカギ
すでに、東京電力ホールディングスと中部電力が出資する発電会社JERAが実証実験を始めており、2024年度には碧南火力発電所(愛知県碧南市)で約2か月間、混焼を実施することを目指している。
実現すれば、大型の商用発電所では世界初になるという。アンモニアには燃えにくい特性があるため、これをクリアしていく必要がある。その先には50年までにアンモニアだけを燃焼する発電を始める計画もある。
現在はアンモニアのほとんどが工業用や肥料用に使われ、19年の国内消費量は100万トン程度。国内のすべての石炭火力発電所で20%混焼を実施すれば、この約20倍となる約2000万トンが必要になる。
アンモニアを大規模に調達する方法として、水素を原料にして海外で生産し、液化して日本に船舶輸送する方法が検討されている。その水素は水を電気分解したり、石炭や天然ガスから取り出したりして製造することになる。化石燃料から水素を作る過程で発生するCO2は地下に貯留する構想がセットになる。
コスト面も課題だ。経産省の官民協議会で示された資料(2021年2月)によると、石炭火力の20%混焼の場合の発電価格は12.9 円/kWh(キロワットアワー=電力量) と試算され、石炭火力の発電価格10.4 円/kWhの1.2 倍程度、アンモニアだけで発電した場合には、23.5 円/kWh と試算され、いかに引き下げていけるかが普及の大きなカギを握る。
こうした課題を抱えつつ、アンモニアが重要なエネルギー源として注目されることに変わりはない。これをビジネスチャンスととらえ、エネルギー企業や商社が動き出している。
JERAはマレーシアで水力発電の電力によってアンモニアを製造する計画を発表。国際石油開発帝石(INPEX)はアラブ首長国連邦で天然ガスから作った水素でアンモニアを製造する構想を掲げる。伊藤忠商事はカナダで産出される天然ガスからアンモニアを製造して日本に輸送するため、現地企業と共同調査することに合意したと報じられた。(ジャーナリスト 白井俊郎)