ポイント制度を足がかりに「楽天経済圏」を築いてきた楽天グループの経営が曲がり角を迎えている。米格付け会社が2021年7月26日、長期会社格付けを「投資不適格」に引き下げ、翌日の株価は前日比7%も下がった。
電子商取引(EC)事業を皮切りに事業を多方面に拡大してきたが、自前で通信網を構築する携帯電話事業への投資が膨らんでおり、その動向に株式市場が過敏な反応を示している。
米格付けS&Pは「投資不適格」に格下げ
米格付け会社S&Pグローバル・レーティングは、「トリプルBマイナス」だった楽天グループの長期会社格付けについて、一般的には投資不適格とみなされる「ダブルBプラス」に1段階引き下げた。
理由は債務返済能力への懸念であり、NTTドコモなど大手3社に続いて2020年4月にサービスを本格開始した携帯電話事業が要因だ。ビルの屋上などの一画を借りて設置する基地局の整備に手間取り、携帯電話事業全体への投資額が当初の想定よりも2000億円多い1兆円規模に膨らむ見通しになっている。
もともと楽天グループは、傘下の楽天モバイルが大手携帯電話会社から通信回線を借りる格安携帯電話事業を2014年から展開していた。大手3社の寡占状態に風穴を開けて、業界全体の料金水準を引き下げたい総務省の後押しを受けて、2017年12月に自前の通信網を持つ「第4の通信事業者」として参入を表明。クラウドコンピューティングの活用によって通信網を割安に整備・運営できる技術を独自開発して、大手3社に対抗しようとした。
だが、携帯電話料金の引き下げに並々ならぬ意欲を燃やす菅義偉氏が20年9月に首相に就任したことで風向きが変わる。その意向を受けた総務省が、大手3社に料金の引き下げを強く働きかけて、大手3社はやむを得ず格安プランをそれぞれ打ち出した。
その結果、楽天モバイルの価格面の優位性が薄れ、つながりやすさでも基地局ネットワークを既に構築している大手3社には太刀打ちできない状況に陥った。