コロナ禍と大河ドラマで注目! 企業経営の教科書
戦後起業した企業の多くが、自社の経営理念に常に忠実であった否かは別としても、企業理念を掲げ日本の戦後復興である高度成長期を支えてきた礎には、渋沢の思想が少なからず影響を与えてきたとも言えるでしょう。
ちなみに、京セラ創業者で多くの経営者の思想に影響を及ぼしている稲盛和夫氏などは「論語と算盤」の伝道者としても有名であり、今も多くの経営者が間接的に渋沢栄一の経営思想を受け継いでいるわけです。
このように企業経営の教科書とも言えそうな「論語と算盤」ですが、大谷選手の話とは別に、今また経営者のあいだでこの本やそれに関する書籍を読んでみようという機運が高まっていると聞きます。
今年(2021年)のNHK大河ドラマで渋沢栄一が取り上げられていることもありますが、個人的にはたまたま時代がそれを必要としているからではないかと思っています。
というのは、コロナ禍のような未曽有の危機の時にこそ経営者は原点に立ち返ることが重要であると、ここまでこの危機を乗り切ってきた複数の経営者が原点回帰という言葉をキーワード的に口にしているからです。
彼らは、いつ終わるとも知れぬコロナ禍の不安な状況に加えて、テレワークなどの進展により働き方の多様化や副業との掛け持ち化なども進むことで、今後社員の会社に対する帰属意識が薄らいでいくことが大いに考えられるのだと言います。
そんな中で、社内の求心力を高めつつコロナ禍の難局を乗り切っていくには、今改めて創業の想いに立ち返り経営理念や社訓に謳われている自社存立の社会的意義を再認識しつつ社員との共有をはかっていくことが重要なのだ、というのです。「論語と算盤」はそんな経営者たちの言葉を正しく理解し実践するための、原点の手引書として注目されているのかもしれません。